最新記事

環境問題

欧米、日本、アジアからもプラゴミ  マレーシア、世界のゴミ捨て場返上へ

2019年4月28日(日)16時17分
大塚智彦(PanAsiaNews)

マレーシアの違法プラスチック処理施設が、ヤシ油農園のそばにスクラップを捨て置いている。Lai Seng Sin - REUTERS

<大型連休でも海外に行かないし、マレーシア製のものを買ったこともない。でも、そんなあなたの捨てたゴミがこの国に不法に送られているかも──>

マレーシアのエネルギー・科学・技術・環境・気候変動省のヨー・ビー・イン大臣は4月23日、港湾施設視察時の記者会見で「マレーシアへの輸入が禁止されている再生不可能なプラスチックゴミなどの産業廃棄物が違法に入ってきている」として、こうした違法ゴミを輸出した国に送り返すことを求めた。同時に「マレーシアは世界のゴミ捨て場になっている」と現状に危機感を明らかにした。マレーシア紙「ザ・サン・デイリー」やベルナマ通信が伝えた。

フィリピンでは韓国やカナダから送られてきた違法な再生不可能なブラゴミや産廃が問題になり、韓国には一部返送が始まり、カナダには「引き取らないなら宣戦布告だ」とドゥテルテ大統領が怒りをぶちまける事態になっている。それと同じ問題にマレーシアも直面していることが浮き彫りになった。

マレーシアの主要港であるクラン港では2018年以降、関係当局が輸入されたコンテナを検査していた際に今回発表された24個のコンテナから違法なプラゴミなどが発見されたという。

ヨー大臣によるとコンテナはいずれもスペインからのもので、輸出用の書類上は「クリーンな使用済みプラスチック」とありマレーシア国内において再生可能なゴミとなっていたものの、実際は再生不可能なゴミであり、マレーシアには輸入が許可されないものだったという。

輸出国へ返送するが費用は負担しない

ヨー大臣は会見で「(違法プラゴミなどの)輸出入に関わった会社を割り出して現在調査中であり、近く(法に従い)罰せられることになるだろう。そのうえで運搬してきた船会社によって輸出国に返送する指示を関係当局が出すことになる」との考えを示したが、返送に関わる費用をマレーシア政府が負担することはないと断言した。

「ネーション」紙はマレーシア関係当局が最近2週間の集中調査で、輸入に際し「特別な許可や調査が不要な輸入品である」との偽の申告書でマレーシアに持ち込まれる違法プラゴミの輸出国は主に米、英、独などの先進国であるとの調査結果を報じた。

同じ会見でヨー大臣は「もし今回の調査でこうした違法プラゴミが発見されなかったら、マレーシア本土に陸揚げされ、再生処理工場に持ち込まれただろう」と述べた。

そうしたゴミは再生処理工場でも再生不可能なことから放置されるか、焼却処分され、それが環境汚染、周辺住民への影響などと2次被害を生み出す可能性があり懸念が出ている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米メディケアの薬価引き下げ、大半の製薬企業は対応可

ワールド

米銃撃で負傷の州兵1人死亡、アフガン出身容疑者を捜

ワールド

カナダ、気候変動規則を緩和 石油・ガス業界の排出上

ビジネス

都区部コアCPI、11月は+2.8%で横ばい 生鮮
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中