最新記事

テロ

スリランカ爆破テロ、犯人は「ナショナル・タウヒード・ジャマア」か

National Thowheed Jamath Blamed for Sri Lanka Bombings

2019年4月23日(火)16時10分
イワン・パーマー

西部ネゴンボ市の聖セバスティアン教会の爆発跡 REUTERS

<無名で小規模のイスラム過激派が、国際組織の助けであの大規模で正確なテロを起こした?>

イースター(復活祭)サンデーの4月22日、スリランカで連続爆発事件が発生し、少なくとも290人が死亡したテロ事件について、国内のイスラム過激派組織が国際的なネットワークの力を借りて実行したと、スリランカ政府は述べている。この組織は、「ナショナル・タウヒード・ジャマア(National Thowheed Jamath)」と呼ばれる小規模の過激派グループだ。22日に教会やホテルで起きた爆発事件では負傷者も500人以上となったが、犯行声明はまだ出ていない。

これまでに24人が、首都コロンボとその周辺で発生した爆発事件に関与した容疑で逮捕されている。ロイター通信によれば、事件は7人の自爆犯によって実行され、国際的なネットワークに支援を受けていた可能性が高いという。

保健大臣のラジタ・セナラトネは政府の考えとして、「今回の連続爆発事件が、国内の組織だけで実行されたとは考えていない」と述べた。「国際的なネットワークの支援がなければ、このような犯行は実現できなかっただろう」

スリランカ大統領マイトリーパーラ・シリセナは声明で、爆破事件の首謀者について情報を収集すると述べた。また報道官は、「今回の事件の背後には海外のテロ組織がいることを情報機関の報告書が指摘している。従って大統領は、海外諸国の支援を求めるつもりだ」と述べたとBBCが伝えている。

ナショナル・タウヒード・ジャマアは、過去に大規模な攻撃に関与したことがなく、比較的知られていない組織だ。しかし2018年に、メンバーがスリランカ国内にある多くの仏像を破壊したとされ、捜査関係者の間では注目されていた。

スリランカ当局はまた、攻撃の可能性について警告を受けていたことを認めている。事件に関与しそうな参考人の氏名を2週間前には把握していたというのに、爆破事件が発生して多くの死傷者が出てしまったのだという。

英紙ガーディアンによると、セナラトネは記者会見で、「4月9日に国家情報機関トップが作成した書簡には、テロ組織のメンバー名が多く挙げられていた」と語った。「(ラニル・ウィクラマシンハ)首相はそうした書簡や情報について知らされていなかった。私たちは責任を回避しようとしているのではないが、それが事実だ。それらの報告書を見て私たちは驚いた」

首相のウィクラマシンハは、2018年10月に大統領からいったん解任され、12月に復帰した人物だ。首相は今回の事態を受けて、情報機関とのあいだで何が起きたのかを確認するよう求めた。「適切な予防措置が取られなかった理由を調査しなくてはならない。私もほかの閣僚たちも知らされていなかった」

コロンボ司教区のマルコム・ランジス枢機卿は、「犠牲者を出さずに済んだ可能性があると知り、私たちは苦悩している。なぜ防げなかったのだろうか」と述べたとAP通信が伝えている。

(翻訳:ガリレオ)

201904300507cover-200.jpg

※4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が尊敬する日本人100人」特集。お笑い芸人からノーベル賞学者まで、誰もが知るスターから知られざる「その道の達人」まで――。文化と言葉の壁を越えて輝く天才・異才・奇才100人を取り上げる特集を、10年ぶりに組みました。渡辺直美、梅原大吾、伊藤比呂美、川島良彰、若宮正子、イチロー、蒼井そら、石上純也、野沢雅子、藤田嗣治......。いま注目すべき100人を選んでいます。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中