<ビジネスは超一流だが、問題は所有者がサウジアラビア政府であること>

サウジアラビア政府が所有する国営石油天然ガス会社、サウジ・アラムコは、収益性の高さでは世界有数といわれている。2018年の純利益は1110億ドルに達し、アップルやエクソンモービルをも抜いて世界最大となった。売り上げでも世界最大だ。

だが、いくらこれらの数字が立派でも、2021年までにアラムコのIPO(新規株式公開)を成功させて、時価総額2兆ドルの企業にする、というサウジ政府の計画はさすがに壮大過ぎると専門家はみる。アラムコは石油収入に依存しており、事業も多様化していないため、業績は石油価格の変動に左右されやすい。

確かにアラムコのキャッシュフローはロイヤル・ダッチ・シェルやエクソンモービルといった他の石油メジャーの2〜3倍に達している。だが時価総額がこの2社の6~7倍にもなるというサウジ政府の予想は眉唾だ。投資家は、アラムコの価値は1兆ドルを超えるとしても、2兆ドルを超えることはないとみる。

ちなみにエクソンモービルの現在の時価総額は3270億ドル、シェルは2850億ドルだ。

財務データの開示なし

サウジ政府は、上場したアラムコ株の5%を売却して1000億ドルを調達したいと考えている。実現すれば史上最大の調達額だ。アラムコの株が世界の市場でどう評価されるかは、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子にとってきわめて重要だ。彼はアラムコのIPOを、2030年までの達成を目指す経済改革の基盤にしたいと考えているからだ。

しかし、サウジ政府が見込む2兆ドルの時価総額は、財務データが不透明過ぎて計算のしようがない。

ブルームバーグは、アラムコの収益とキャッシュフローがいかに莫大でも、サウジ政府が希望する2兆ドルという評価は正当化できないとした。ブルームバーグは2017年上半期のアラムコの純利益を338億ドル、キャッシュフローは521億ドルと推定したが、アラムコはこれは低すぎると否定している。

国際会計基準に基づき、アラムコの報告を引用したデータでも、原油価格が平均で1バレル=41ドルだった2016年上半期のアラムコの純利益は72億ドルと推定されている。だがアラムコはこれも認めていない。

「これらは不正確な情報であり、アラムコは財務実績および財政状況に関する推測についてコメントしない」と、同社は声明を出した。

サウジ政府の財布