最新記事

石油会社

アップルを抜き利益世界一になったサウジアラムコの上場価値は

Saudi Aramco Is World's Most Profitable Company; Worth $2 Trillion in Valuation?

2019年4月3日(水)16時40分
アーサー・ビラサンタ

サウジアラビアの国営企業アラムコの石油タンク Ahmed Jadallah - REUTERS

<ビジネスは超一流だが、問題は所有者がサウジアラビア政府であること>

サウジアラビア政府が所有する国営石油天然ガス会社、サウジ・アラムコは、収益性の高さでは世界有数といわれている。2018年の純利益は1110億ドルに達し、アップルやエクソンモービルをも抜いて世界最大となった。売り上げでも世界最大だ。

だが、いくらこれらの数字が立派でも、2021年までにアラムコのIPO(新規株式公開)を成功させて、時価総額2兆ドルの企業にする、というサウジ政府の計画はさすがに壮大過ぎると専門家はみる。アラムコは石油収入に依存しており、事業も多様化していないため、業績は石油価格の変動に左右されやすい。

確かにアラムコのキャッシュフローはロイヤル・ダッチ・シェルやエクソンモービルといった他の石油メジャーの2〜3倍に達している。だが時価総額がこの2社の6~7倍にもなるというサウジ政府の予想は眉唾だ。投資家は、アラムコの価値は1兆ドルを超えるとしても、2兆ドルを超えることはないとみる。

ちなみにエクソンモービルの現在の時価総額は3270億ドル、シェルは2850億ドルだ。

財務データの開示なし

サウジ政府は、上場したアラムコ株の5%を売却して1000億ドルを調達したいと考えている。実現すれば史上最大の調達額だ。アラムコの株が世界の市場でどう評価されるかは、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子にとってきわめて重要だ。彼はアラムコのIPOを、2030年までの達成を目指す経済改革の基盤にしたいと考えているからだ。

しかし、サウジ政府が見込む2兆ドルの時価総額は、財務データが不透明過ぎて計算のしようがない。

ブルームバーグは、アラムコの収益とキャッシュフローがいかに莫大でも、サウジ政府が希望する2兆ドルという評価は正当化できないとした。ブルームバーグは2017年上半期のアラムコの純利益を338億ドル、キャッシュフローは521億ドルと推定したが、アラムコはこれは低すぎると否定している。

国際会計基準に基づき、アラムコの報告を引用したデータでも、原油価格が平均で1バレル=41ドルだった2016年上半期のアラムコの純利益は72億ドルと推定されている。だがアラムコはこれも認めていない。

「これらは不正確な情報であり、アラムコは財務実績および財政状況に関する推測についてコメントしない」と、同社は声明を出した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米中堅銀、年内の業績振るわず 利払い増が圧迫=アナ

ビジネス

FRB、現行政策「適切」 物価巡る進展は停滞=シカ

ビジネス

英インフレ、今後3年間で目標2%に向け推移=ラムス

ビジネス

ECB、年内に複数回利下げの公算=ベルギー中銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中