最新記事

マレーシア

マレーシアの若者たちに「日本人を見習おう」 マハティール首相、ルックイースト再び

2019年3月17日(日)19時59分
大塚智彦(PanAsiaNews)

模範は日本とアイスランド

マハティール首相は日本人の倫理、価値観と同時に欧州のアイスランドが進める若者政策にも言及した。アイスランドは13〜18歳の若者12人からなる「青少年評議会(ユース・カウンシル)」を首相官邸直轄組織として設置。若者の立場、考えから「持続可能な開発目標」などを提言、促進する役割を担っている。

こうした政治への若者の積極的な関わりを反映して、2017年のアイスランドでの総選挙では10代の有権者の投票率は75.2%、20代前半の投票率は69.6%と政治への関心の高さが裏付けられている。

さらに1998年から取り組んだという「ユース・イン・アイスランド」という官民一体となった取り組みでは、それまで欧州でも有数といわれた若者の薬物使用、飲酒、喫煙を劇的に削減することにも成功。さらに男女の賃金格差を禁止する法律を世界で初めて制定し、世界で最も男女平等が進んだ国、欧州で一番「若者のクリーン度指数」が高い国を実現している。

2025年までの先進国入りを目標

マハティール首相は約30年前に始まったアイスランドのこうした若者政策をマレーシアにも導入して「マレーシアの理想的若者像」政策を進めている。

この政策はクアラルンプールなどの公共住宅などの一般住宅に住む12歳から17歳までの若者2000人を対象としている。さらにこの政策では若者の健康的で活動的な生活スタイルを追求しながら愛国心や福祉、社会などを学び独自の能力、創造力を養うことなどを目標に掲げている。

マハティール首相は2025年までにマレーシアの先進国入りを目標に掲げており「この目標を達成するために、日本人の価値観などを養うことは重要な鍵となる」としている。

老練なベテラン政治家としていまやマレーシアだけでなく東南アジア諸国連合(ASEAN)全体をけん引する指導的立場にあるマハティール首相が自国の若者に対し、日本人を「お手本や模範」にして見習うように呼びかけ、指摘した責任感、羞恥心、向上心などの数々の価値観。だが最近の日本国内の事件や犯罪を振り返ると、マハティール首相が指摘したその価値観を問われているのはむしろ日本人自身ではないだろうか。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イエメン分離派指導者が出国、UAEが手助けとサウジ

ワールド

トランプ氏、ベネズエラ監視の長期化を示唆 NYタイ

ビジネス

英企業、向こう1年の賃金上昇予想3.7% 若干緩和

ビジネス

金、今年前半に5000ドル到達も 変動大きい年とH
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 6
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 7
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 8
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 9
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが…
  • 10
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 6
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 10
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中