最新記事

子ども

自然に囲まれて育った子のほうが精神疾患にかかりにくいことが明らかに

2019年3月6日(水)18時10分
松丸さとみ

ClarkandCompany-iStock

94万人超の子どもについて分析

自然に囲まれて育った子どもは、緑が少ない地域で育った子と比べると後にさまざまな精神疾患にかかるリスクが最大で55%低いことがこのほど行われた調査で明らかになった。

デンマークのオーフス大学が行なった調査で、結果は米国科学アカデミーの機関誌「米国科学アカデミー紀要」(PNAS)に発表された。研究チームは、自然に囲まれた子の方が精神疾患を発病するリスクが低い原因ははっきりしていないとしつつ、心の健康を保ち精神疾患を減らすには、都市計画に自然環境を取り入れることが重要だと指摘している。

調査は、1985〜2003年の間にデンマークで生まれ、10歳の誕生日の時点で同国に住んでいた人のうち、長期的な心の健康状態、社会経済的な立場、居住地のデータが分かる94万3027人を対象に分析した。また、居住地の自然環境を判断する際には、1985〜2013年の間に撮影された高画質の衛星画像データを使用した。

なお、デンマークは日本でいうところの「マイナンバー」のような制度があり、国民の性別、生まれた場所、健康状態、社会経済的な立場などについて常に最新の情報が分かるようになっている。今回は、調査対象になった当人だけでなく、親や姉妹兄弟の精神疾患に関する全データを入手したという。

都市計画に緑を取り入れよう

調査の対象となった人たちについて、誕生から10歳になるまでの居住地と自然環境を分析した。さらに、10歳の誕生日を迎えてから2013年12月31日までの間に(その前に死亡したりデンマークから他国へ移住したりした場合はその時までの間に)、精神疾患で医療機関を訪れたか否かについて調べた。また算出したデータは、出生年や性別、居住地区のほか、両親の学歴や収入、精神障害既往歴などを考慮して調整した。

精神疾患に関しては、知的障害や拒食症、強迫神経症、うつ病、双極性障害、気分障害、薬物乱用など18のタイプについて調べた。これらの疾患をそれぞれ、子どもの頃に住んでいた地域に緑が少なかったケースと多かったケースで比較したところ、知的障害と統合失調症を除くすべての精神疾患について、緑が少ない地域に住んでいた子の方が発病するリスクが15〜55%高いという結果が出た。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベネズエラ沖の麻薬船攻撃、米国民の約半数が反対=世

ワールド

韓国大統領、宗教団体と政治家の関係巡り調査指示

ビジネス

エアバス、受注数で6年ぶりボーイング下回る可能性=

ワールド

EU、27年までのロシア産ガス輸入全面停止へ前進 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 3
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 4
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡…
  • 5
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 6
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 7
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中