最新記事

宇宙

米宇宙計画に暗雲 NASA、スペースXとボーイングの設計リスク警鐘

2019年3月2日(土)14時01分

ボーイングとスペースXが開発しているシステムは、近年すでに数度にわたって遅延している。もっとも、数十億ドルを投じて建設される、地球の重力圏を離脱できる宇宙船の複雑さを考えれば、計画の遅れはこのセクターでは珍しくもない。

NASAのジョシュア・フィンチ広報官は、守秘義務に触れ、ボーイングとスペースXに関する技術的な質問は全てそれぞれの会社に問い合わせるよう回答した。ただ、「飛行の安全確保は常にスケジュールよりも優先される」と述べた。

ボーイングの広報担当者ジョシュ・バレット氏は、1月実施した構造試験プログラムを完了した時点で、カプセルの構造的脆弱性というリスクは解決したと述べた。ボーイングはその他多くの問題に取り組んでいるが、「構造的に大きなシステム変更を要するものではない」としている。

「当社で出ている数値は、NASAの安全基準を上回っていることを示している」とバレット氏は言う。

スペースXの広報担当者ジェームス・グリーソン氏は、NASAと協力しつつ、「これまでで最も安全で先進的な有人宇宙飛行システムの1つを開発した」と述べた。

グリーソン氏は、「スペースXにとって、乗組員の安全な飛行以上に重要なことはない」とした上で、それが「宇宙飛行を夢見る人に道を開くという当社の長期目標の核心」であると述べた。

米電気自動車大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)によって設立されたスペースXは、画期的な再利用可能ロケット技術によって、ロケット打ち上げコストを削減。一方、ボーイングの宇宙関連事業は、1960年代の米国初の有人宇宙飛行計画にさかのぼるものだ。同社は世界最大の飛行機メーカーでもある。

期限は迫っている。米国は現在、ロシアに1回あたり約8000万ドルを払って、地上から約400キロの軌道に浮かぶ総工費1000億ドルの研究拠点であるISSまでスタッフを運んでいる。

だが2019年以降は、製造スケジュールやその他の要因により、ロシアの宇宙船に米国の乗員を搭乗させる余裕がなくなる。NASAは先週、米国からのアクセスを確保するため、今秋と2020年春にあと2人分の枠を買い取ることを検討していると述べた。

この追加枠確保の計画が発表される1週間前、NASAの安全委員会は連邦議会に対し、有人飛行プロジェクトの遅延により米国によるISS利用が危うくなる場合に備え、「緩和計画」を立案することを求めた。これは米政府監査院が以前指摘した懸念を踏まえたものだ。

NASAはスペースXによる3月2日の無人飛行試験に向けた飛行準備状況の点検を22日実施し、スペースXが有人飛行に関して提起された問題に取り組むのと並行して、NASAはスペースXによる無人飛行試験の実施を許可した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三井住友FG、インド大手銀行に2400億円出資 約

ビジネス

米国は最大雇用に近い、経済と労働市場底堅い=クーグ

ビジネス

米関税がインフレと景気減速招く可能性、難しい決断=

ビジネス

中国製品への80%関税は「正しい」、市場開放すべき
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 5
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 6
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 7
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 8
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 9
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 10
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 7
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中