最新記事

宇宙

米宇宙計画に暗雲 NASA、スペースXとボーイングの設計リスク警鐘

2019年3月2日(土)14時01分

米宇宙船計画で競合する宇宙開発ベンチャー企業スペースXと航空大手ボーイングに対し、米航空宇宙局(NASA)が設計・安全面での懸念を伝えたことが、業界関係者や政府報告書で明らかになった。写真は2018年、国際宇宙ステーション(ISS)。NASA提供(2019年 ロイター NASA/Roscosmos/Handout via REUTERS)

米宇宙船計画で競合する宇宙開発ベンチャー企業スペースXと航空大手ボーイングに対し、米航空宇宙局(NASA)が設計・安全面での懸念を伝えたことが、業界関係者や政府報告書で明らかになった。

今年後半に有人宇宙飛行計画の再開を目指す米国のもくろみが、これにより脅かされている。

米国から国際宇宙ステーション(ISS)に向けて再び宇宙飛行士を送り出そうと、NASAはスペースXに26億ドル(約2880億円)、ボーイングに42億ドルを投じて、有人カプセル搭載のロケット打ち上げシステム開発を発注。宇宙飛行士を送り出すのは、米スペースシャトル計画が終了した2011年以降初めてとなる。

巨額を投じたこの商業乗員輸送プログラム(CCP)では、初の無人飛行試験が3月2日予定されているが、NASAは今月、2018年の年次報告書において4つの「重要なリスク項目」に言及した。

ボーイングに対して同報告書は、断熱シールドを展開した際にカプセルに生じる構造的な脆弱性を指摘。スペースXに対しては、2016年の爆発事故を受けたロケットのキャニスターの再設計と、乗員がカプセルに搭乗した状態で燃料注入を行う「ロード&ゴー」プロセスに言及している。また、両社共に「パラシュート性能」が問題だとしている。

「スペースX、ボーイングともに、現在の発射スケジュールに向けては深刻な課題がある」と同報告書は警鐘を鳴らす。

計画を直接知る2人の人物がロイターに語ったところでは、NASAの懸念は報告書に挙げられた4項目以外にも及んでいた。2月初めの時点では、スペースX、ボーイングそれぞれに未解決の技術的懸念が30─35件、リスク要因として挙げられていたという。

ロイターでは、これらのリスク項目すべてについて内容を確認することはできなかった。だがこの件に詳しい関係者によれば、両社ともにこれらの懸念の「大半」に対処してからでなければ、宇宙飛行士を、そして最終的には観光客を宇宙に送り込むことはできないという。

NASAのリスク・データベースは、情報収集や試験、そしてスペースX、ボーイング両社との共同作業を含む厳格な認証プロセスのなかで、定期的に更新されているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中