最新記事
航空機

ボーイング737MAX運航停止が広がる EU、中国、東南アジアでストップ、米国へも追随の圧力

2019年3月13日(水)09時49分
ロイター

欧州航空安全機関(EASA)は、エチオピア航空が運航する米ボーイングの最新鋭旅客機「737MAX8」の墜落事故を受け、欧州連合(EU)域内における737MAX8型機および同9型機の運航を一時停止すると発表した。737MAX機(2019年 ロイター/David Ryde)

欧州航空安全機関(EASA)は12日、エチオピア航空が運航する米ボーイングの最新鋭旅客機「737MAX8」の墜落事故を受け、欧州連合(EU)域内における737MAX8型機および同9型機の運航を一時停止すると発表した。

EASAは、声明で「入手可能なあらゆる情報に基づき、影響を受ける2モデルの耐空性を確保するため、さらなる措置が必要と判断した」としている。

一方、米連邦航空局(FAA)は737MAXの運航を停止しない方針を示した。

FAAのエルウェル長官代行は「調査ではシステムの性能に問題はなく、航空機の運航を停止する根拠はない」と説明。海外の航空当局からこれまでに提供されたデータには対策を取る必要性を示すものはないとした。

その上で、継続中の調査で安全上の問題が確認された場合は「直ちに適切な措置」を講じると述べた。

米国の航空・宇宙関連問題に関する上院小委員会を主導するテッド・クルーズ共和党議員は、ボーイングの墜落事故を巡り公聴会の開催を計画していることを明らかにした。

10日の墜落事故以降、同型機に運航を停止する動きが相次いでおり、この日は英、ドイツ、フランス、アイルランド、オーストリア、ノルウェー、オーストラリア、シンガポール、マレーシア、オマーンなどが運航停止を発表。これまでにエチオピア航空は保有する737MAX8全機の運航を停止。インドネシア、中国の当局も737MAXの運航を停止しており、同型機の運航は安全との見解を示す米国に対し、他国の措置に追随するよう圧力が強まっている。

米国内でも、共和党の重鎮ロムニー上院議員と2020年米大統領選への出馬を表明している民主党のウォーレン議員がこの日、同型機の運航を一時停止するよう、FAAに要請した。

墜落事故を受け、ボーイングは向こう数週間でソフトウエアを更新すると表明。声明で737MAX型機の安全性には「完全な自信」があるとの見解を示した。世界各国で運航停止が相次いでいることについて「規制当局や顧客は最適と考える決定を行った」とし、「(米FAAは)現時点では一段の措置は命じておらず、現在入手している情報に基づくと、航空各社に対し新たなガイダンスを出す根拠はない」とした。

10日のエチオピア航空の墜落事故では、乗客乗員157人全員が死亡。原因究明に向けた調査が進められている。昨年10月にもインドネシア・ライオン航空運営の同型機が墜落事故を起こしている。

原因はまだ分かっておらず、この2件の事故の関連性も明らかではない。

英民間航空局は、737MAXの同国への発着および領空通過を禁止すると発表した。

シンガポール民間航空庁も声明で、737MAX型機すべての運航を一時的に停止すると発表。シンガポール航空傘下のシルクエア―、中国南方航空、ガルーダ・インドネシア航空、山東航空、タイ・ライオン・エアが対象となる。

オーストラリアの民間航空安全当局のシェーン・カーモディー最高経営責任者(CEO)は声明で「737MAXの運航継続に関する安全性リスクの確認でさらなる情報を待つ間、一時的に運航を停止する」と説明した。オーストラリアの航空会社は同型機を運航しておらず、同国を発着するシンガポール航空傘下のシルクエア―とフィジー航空のみが運航停止の影響を受ける。

中南米では、ブラジルのゴル航空、アルゼンチンのアルゼンチン航空、メキシコのアエロメヒコ航空が同型機の運航を停止。

アジアでは、韓国のイースター航空が13日から同型機2機の運航を停止する方針を示している。インドは同型機の点検強化を指示しつつつも、「目立った懸念」は確認されていないとしている。

一方、北米・中東間の路線では同型機の運航が続いている。米サウスウエスト航空はすべてのボーイング機の安全を確信しているとの認識を示している。

ボーイングの株価は12日の取引で6.1%急落。墜落事故以降の下落率は11.15%と2営業日の下落率としては2009年7月以来の大きさを記録した。時価総額は266億5000万ドル吹き飛んだ。

[アジスアベバ/ワシントン 12日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中