最新記事

環境問題

巨大なのはハチだけじゃないインドネシア 奇跡のような昆虫、蝶の楽園も開発乱獲の危機

2019年2月28日(木)15時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

「蝶の谷」と呼ばれる保護区ですら美しい蝶たちの数が減少していると語るバンティムルン自然保護区の担当者 REUTERS/Ahmed Tawil

<38年ぶりに発見され話題を集めたハチが住む地上の楽園は、危機に直面している>

インドネシア東部北マルク州の島で世界最大といわれる巨大ハチが調査研究チームによって発見され、生存が確認されたことが大きなニュースとなった。学名「メガチリ・プルト(Megachile Pluto)」と呼ばれるオオハキリバチの一種で1858年にイギリスの博物学者アルフレッド・ラッセル・ウォレス氏が最初に発見したことから「ウォレスの巨大ハチ」あるいは「空飛ぶブルドック」の異名でも呼ばれている。

ウォレス氏の報告後、発見の報告が途絶えたため学者の間では絶滅したとみられていた。ところが、1981年に米昆虫学者アダム・メッサー氏が再び発見し、標本を採取したことからその存在が確認された。しかし、この幻の巨大ハチはその後、まったく姿を見せることはなかった。今回は38年ぶりに発見されただけではなく、野生の生きている個体が撮影されたのは史上初の快挙だ。

ウォレス氏が巨大ハチを発見したのは北マルク州南ハルマヘラ県にあるバチャン島のジャングルで、メッサー氏はバチャン島と周辺の小島でも発見したとしている。

今回巨大ハチを発見したのは米テキサスに本部を置く自然環境保護団体「グローバル・ワイドルライフ・コンサーベーション」の調査研究チームの4人。彼らは北マルク州の南ハルマヘラ県などの島々で巨大ハチの調査を行っていたところ、2019年1月25日に発見、確認し、プラスチックの容器に一時的に捕獲して写真と動画を撮影、2月21日に公表した。


38年ぶりに発見された巨大ハチ Australian Academy of Science / YouTube

調査チームによると今回発見された巨大ハチは雌で、全長3.8cmで羽を広げると約6cmになる大きさという。雄はここまで大きくはならないといわれている。

名前の由来にもなっているウォレス氏(1823~1913)は博物学者と同時に探検家でもあり、インドネシア各地を動植物の探訪旅行で巡り、その興味深い発見などを著書「マレー半島」に記している。彼の功績はインドネシアが生物相の分布で2つの地域に区別される分布境界線を発見、特定したことにある。

バリ島=ロンボク島間の海峡と、カリマンタン島=スラウェシ島間の海峡を南北に結ぶ線がその分布境界線で、俗に「ウォレス線」と呼ばれている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ウクライナ首脳、日本時間29日未明に会談 和平巡

ワールド

訂正-カナダ首相、対ウクライナ25億加ドル追加支援

ワールド

ナイジェリア空爆、クリスマスの実行指示とトランプ氏

ビジネス

中国工業部門利益、1年ぶり大幅減 11月13.1%
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中