最新記事

米軍事

宇宙を「新たな戦闘領域」とする米宇宙軍の脅威

Scientists Warn Trump’s Space Force Would Be ‘A Profoundly Bad Idea’

2019年2月21日(木)16時30分
シャンタル・ダシルバ

一国主義で進むアメリカの宇宙軍構想(写真はスミソニアン国立航空宇宙博物館、2017年10月) Jonathan Ernst-REUTERS

<宇宙で軍拡競争を繰り広げるよりも、市民生活のインフラとなっている民生用人工衛星を協力して守るべきだ、と科学者たちが警告>

ドナルド・トランプ米大統領の「宇宙軍」創設構想に、アメリカの科学者団体が警鐘を鳴らした。アメリカが宇宙空間を「戦闘領域」とみなし、宇宙での脅威に対応する軍隊を新設すれば、「宇宙空間における軍拡競争に火をつけることになる」と、科学者たちは警告している。

今でも米軍の任務には、宇宙空間における潜在的な脅威への対処が含まれているが、トランプ大統領は「宇宙における脅威を抑止し、反撃する」任務に専従する軍を創設する必要があるとして、2月19日に大統領令に署名。米国防総省に宇宙軍創設に向けた法案を作成するよう指示した。

科学者たちに言わせると、トランプの構想は「非常にまずいアイデア」だ。既に宇宙兵器の開発を進めている中国やロシアがますます新型兵器の導入を急ぎ、歯止めなき軍拡レースになるのが目に見えているからだ。

「アメリカの宇宙軍創設が誘因となって、各国が宇宙兵器開発を進めれば、宇宙空間で軍事衝突が起きる確率が高まる」と、「憂慮する科学者同盟」の宇宙防衛問題専門家ローラ・グレゴは、同盟のサイトで発表された声明で警告している。

「トランプ大統領は宇宙を新たな戦闘領域と位置付けた。軍にとって宇宙が重要であることは否めないが、軍事活動は宇宙における多様な活動のほんの一部でしかない。現在2000個近い人工衛星が運用されているが、その80%は民生用で、通信その他の人々の生活に不可欠なサービスを提供している」

平和利用のリーダーになれ

人工衛星が破壊されれば市民生活に壊滅的な損害を与えるため、「宇宙空間を守ることが私たちの責務だ」と、グレゴは訴えている。

「宇宙空間の安全保障は、一国主義的なアプローチや軍事的手段のみでは達成できない。宇宙利用に乗り出している他の国々との調整と協力が必要であり、外交努力が求められる」

宇宙の長期的な持続可能性の維持のための指針として、EUが提案した「宇宙活動の国際行動規範」や、宇宙空間の軍拡競争阻止を目指す国連の政府専門家グループ(GGE)の規範など、現在さまざまなルールづくりが進んでいると、グレゴは指摘し、アメリカはこうした試みの先頭に立ち、宇宙空間の軍事化ではなく、平和利用を推進すべきだと論じている。

「人工衛星を守るにははるかに優れた方法がある。運用中の衛星の40%はアメリカが打ち上げたものだ。今後も長期にわたって安全に運用できるよう、アメリカが率先して平和利用の枠組みづくりに取り組むべきだ」

一方で、アメリカは宇宙兵器開発で出遅れているとして、トランプの構想を支持する声もある。中国とロシアは宇宙空間で軍事的優位に立とうと、アメリカの衛星を攻撃できるレーザー兵器などの開発を進めており、うかうかしていれば劣勢に追い込まれる、というのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国こそが「真の脅威」、台湾が中国外相のミュンヘン

ワールド

米中「デカップリング論」に警鐘、中国外相がミュンヘ

ビジネス

ウォルマート決算や経済指標に注目、「AIの負の影響

ワールド

ドバイ港湾DPワールドのトップ辞任、「エプスタイン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活動する動画に世界中のネット民から賞賛の声
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 4
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 5
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 6
    世界市場3.8兆円、日本アニメは転換点へ――成長を支え…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    反ワクチン政策が人命を奪い始めた
  • 10
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 8
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 9
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 10
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中