最新記事

インド

「同意なく僕を産んだ」インドの男性、親を提訴へ

2019年2月13日(水)16時30分
松丸さとみ

「同意なく僕を産んだ」として両親を提訴する準備を進めている男性 (Photo Credits: Facebook| Nihilanand)

<インドのムンバイに住む男性が、「同意なく僕を産んだ」として両親を提訴する準備を進めている。その意図は......>

「子供を投資みたいに扱わないで」反出生主義の男性

「同意なく僕を産んだ」として、インドの男性(27)が両親を提訴する準備を進めている。インドのムンバイに住むラファエル・サミュエルさんだ。子孫を残すべきではないという「反出生主義」と呼ばれる哲学の擁護者で、自分の同意を取らずに自分を産んだとして両親を提訴する構えだ。

サミュエルさんは、サングラスとつけ髭という出で立ちで動画を作成。インドや世界の人たちに向けて言いたいこととして、「彼らは両親に対して何の借りもない」と話し、「同意なく生まれてきたのなら、生涯、金銭的に面倒を見てもらうべきだ」と主張している。

さらにインドの子供たちに向けて、「自分がやりたくないものを親のためにするのはやめなさい。もしも心の底から本当に自分がしたいと思うことならやりなさい」と語りかけ、子を持つ親たちには、「自分の子供を投資のように扱うべきではない」と訴えている。

「苦しむ人が多すぎる」みんなに考えてもらいたいのが動機

インディペンデント紙によると、サミュエルさんは提訴する意向を両親にすでに伝えてあるというが、自分の訴訟を引き受けてくれる弁護士がまだ見つかっていないという。また、訴訟は判事に棄却される可能性が高いが、それでも、「地球は人類がいない方がマシ」という信念を主張するために裁判を起こすのには意味があるとサミュエルさんは考えているとのことだ。

ビデオでも、自分の意見に対して「肯定的な反応もたくさんあるが、否定的な反応の方がずっと多い」と話し、「私を罵りたければ罵ればいい。でもその前に、私の言い分をよく考えて理解した上で罵ってほしい」と語りかけ、みんなに考えてもらいたいのだと訴えている。

サミュエルさんの両親はともに弁護士で、親子関係は良好だという。母親のカヴィタ・カルナド・サミュエルさんからのものとして、サミュエルさんはFacebookに文章を投稿。「私たちが弁護士だと分かった上で、両親を提訴しようという息子の向こう見ずさには感心する」とし、「私たちがどうすれば(生まれる前の)息子から同意を得られたのか、息子が合理的な説明をできるようであれば、こちらも誤りを認める」と書かれている。

サミュエルさんは英BBCに対し、「苦しみに耐えながら生きている人が多すぎるし、人類が絶滅した方が地球や動物ももっと幸せになれる。苦しむ人もいなくなる」と思いを語った。

インドの英字日刊紙タイムズ・オブ・インディアによると、サミュエルさんのFacebook投稿に付いているコメントは、サミュエルさんに対し否定的なものが多い。

しかしデリー大学法学部のヴァゲシュワリ・ディスワル博士はサミュエルさんの考えに同意しているようだ。自分の子供を生涯支えるのに必要な資金を持つか、さもなければ自己満足や、家名を継承していくため、老後の面倒を見てもらうため、今いる子の兄弟が必要だから、などの理由で子供を作るべきではない、とディスワル博士は述べているという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ホンジュラス大統領選、トランプ氏支持の右派アスフラ

ビジネス

債券市場の機能度DI、11月はマイナス24 2四半

ビジネス

利上げ含め金融政策の具体的手法は日銀に委ねられるべ

ワールド

インド通貨ルピー、約2週間ぶりに史上最安値更新
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業界を様変わりさせたのは生成AIブームの大波
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 5
    「世界で最も平等な国」ノルウェーを支える「富裕税…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中