最新記事

選挙

首相候補は王女様! 王室批判厳禁のタイ、AKBのカバー歌う大物登場で選挙戦は波乱含みに

2019年2月8日(金)18時36分
大塚智彦(PanAsiaNews)

音楽ライブでAKBカバー曲を歌う国民に人気の王女

ウボンラット王女、2018年にはタイの音楽ライブに出演してAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」タイ語カバー曲を披露したこともあるという庶民派で、国民の間の人気は高い。

軍政の訴追を受けて現在海外滞在中のタクシン元首相とは親しい関係といわれ、それが今回タクシン支持派政党の分党から首相候補として立候補することになった背景にあるとみられている。

さらにプミポン国王の後継者である現在のワチラロンコン国王は軍政の新憲法法案に修正を求めるなどプラユット政権との間に「すきま風や軋轢」が伝えられていることも王女立候補の一因とする見方もある。

選挙の行方は波乱含みで混沌と

総選挙日程では立候補者と各政党による首相候補の届け出は2月8日が期限とされているが、前例のない王女の首相候補届け出を選管がどうするのか、受理するのか拒否するのか、を含めて極めて不透明な状態となっている。

王女の届け出を拒否することが「王室に対する礼を失することになるのか」という政治と伝統の狭間で選管関係者は頭を抱え、総選挙で自らも首相候補になり、親軍政政党の躍進でタクシン支持派政党を抑えこむ意気込みだったプラユット首相も対応に苦慮していることは間違いないとされる。

「タイ国家維持党」からはタクシン人気やインラック人気にあやかって票を伸ばそうとする候補者が名前を「タクシン」「インラック」に改名して届け出をするなど2014年5月の軍によるクーデター後も依然として根強いタクシン、インラック人気に軍政は揺さぶられ続けていることが浮き彫りとなった。

こうした王女の首相候補擁立という「隠し玉」的な奇襲で軍政に衝撃を与えることに成功した形のタクシン支持政党側は、当然のことながら海外に滞在するタクシン元首相とその妹、インラック前首相の直接の指示を受けて水面下で動いていたことは間違いない。

北部や東北部の農村地帯、貧困層の圧倒的支持を依然として保っているタクシン支持派の「タイ貢献党」「タイ国家維持党」としては王女を首相候補に戴くことで、国民の圧倒的な支持獲得を狙っており、総選挙は波乱含みの混沌とした展開が確実となってきた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

豪首相が2期目初外遊、インドネシア大統領と会談 防

ワールド

ノルウェー、政府系ファンドからの支出拡大へ ウクラ

ビジネス

JDI、国内外で人員削減 日本は従業員の5割以上

ビジネス

日経平均は続落、利益確定売り継続 円高も重し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 2
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 5
    宇宙から「潮の香り」がしていた...「奇妙な惑星」に…
  • 6
    終始カメラを避ける「謎ムーブ」...24歳年下恋人とメ…
  • 7
    サメによる「攻撃」増加の原因は「インフルエンサー…
  • 8
    iPhone泥棒から届いた「Apple風SMS」...見抜いた被害…
  • 9
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 10
    対中関税引き下げに騙されるな...能無しトランプの場…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 3
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 4
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 5
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 6
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 9
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 10
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中