最新記事

アメリカ政治

トランプ、一般教書演説で国境の壁の意義強調 民主の政権調査「党派心によるばかげた政治」とけん制

2019年2月6日(水)16時00分

トランプ米大統領は、上下両院合同会議で一般教書演説を行い、不法移民の問題は差し迫った国家の危機だと述べ、国境沿いの壁建設を実現すると強調したほか、民主党の動きは米国の繁栄に悪影響を及ぼすとけん制した。同演説を行う同大統領。ワシントンでの代表撮影(2019年/ロイター)

トランプ米大統領は5日夜、上下両院合同会議で一般教書演説を行った。不法移民の問題は差し迫った国家の危機だと述べ、国境沿いの壁建設を実現すると強調したほか、「党派心によるばかげた調査」を目指す民主党の動きは米国の繁栄に悪影響を及ぼすとけん制した。

大統領は国境警備を巡り非常事態を宣言することは控え、2月15日の期限までに妥協案で合意するよう与野党双方に呼びかけた。

「この部屋の大半の人々は過去に壁建設に賛成票を投じたが、適切な壁は一度も建設されなかった。私が実現する」と表明。「単純に言って、壁は機能する。壁は命を救う。協力して妥協し、米国を真に安全にする方法で合意しよう」と訴えた。

トランプ氏が求めている壁建設費用の予算計上には議会民主党が反対してきた。

大統領は、政権に対する調査を目指す民主党の動きや国外の戦争に米国が関与する可能性などが米経済を脅かすとも警告し、「米国では経済的奇跡が起きている。それを止め得るのは、ばかげた戦争や政治、理不尽な調査だ」と述べた。

トランプ政権を巡っては、下院の過半数を獲得した民主党が一連の調査を計画しているほか、モラー特別検察官は2016年大統領選へのロシアの介入疑惑やトランプ陣営との共謀の可能性を捜査している。

トランプ氏は演説で失業率の低さや製造業の雇用増など経済面での実績を強調したが、一段の成長加速に向けた新たな政策には乏しい内容となった。

また、処方薬の値下げやインフラ改修への1兆ドル拠出などで民主党に譲歩する構えも見せたが、互いに主張を譲らないこれまでの姿勢や2020年米大統領選への警戒感を踏まえると、実際に歩み寄ることが可能かどうかは不明だ。

トランプ氏は、中国など諸外国との貿易関係をより米国に有利な条件に見直す取り組みをしてきたことも強調。中国との合意は「不公平な通商慣行を終わらせ、米国の慢性的な貿易赤字を削減するとともに、米国民の雇用を守る実質的かつ構造的な改革を盛り込んだものでなければならない」と述べた。

さらに、「『米国に死を』と唱え、ユダヤ人の虐殺をちらつかせる体制から目を背けない」と語り、イスラエルを脅かすイランをけん制した。

このほか外交政策では、ベネズエラのマドゥロ大統領の退陣に向けた取り組みを支持する立場を表明したほか、過激派組織「イスラム国」(IS)はほぼ掃討されたとの認識を示した。

[ワシントン 5日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月7日号(9月30日発売)は「2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡」特集。投手復帰のシーズンも地区Vでプレーオフへ。アメリカが見た二刀流の復活劇

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米8月の求人件数は小幅増、採用減が労働市場の減速を

ワールド

トランプ氏「おそらく政府閉鎖になる」、民主党に「不

ビジネス

米CB消費者信頼感、9月は予想下回る 雇用機会巡る

ワールド

米国防長官、緊急会議で軍幹部の肥満など批判 トラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけではない...領空侵犯した意外な国とその目的は?
  • 3
    【クイズ】身長272cm...人類史上、最も身長の高かった男性は「どこの国」出身?
  • 4
    10代女子を襲う「トンデモ性知識」の波...15歳を装っ…
  • 5
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 6
    カーク暗殺の直後から「極左」批判...トランプ政権が…
  • 7
    通勤費が高すぎて...「棺桶のような場所」で寝泊まり…
  • 8
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 9
    博物館や美術館をうまく楽しめない人は...国立民族学…
  • 10
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 1
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 2
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由
  • 3
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒りの動画」投稿も...「わがまま」と批判の声
  • 4
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 5
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 6
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 7
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 8
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 9
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中