一帯一路で「汚染輸出」と批判の声 中国セメント業界、環境規制強化と需給過剰で海外進出へ
環境保護団体グリーンピースでグローバル大気汚染部門の主任アナリストを務めるローリ・ミリバータ氏は、「中国企業が工業投資の候補地としている国々のほとんどは、排出物規制・環境基準とその実施状況が非常に弱い」と言う。
「こうした規制の空白を突いて投資が行われているのは実に心配だ」
カザフスタンの環境保護団体アソシエーション・オブ・プラクティシング・エコロジストによれば、カザフスタンには欧州連合(EU)や中国で導入されているような全国レベルでの統一的な汚染防止基準が存在せず、セメント生産プラントの水銀排出物については監視が行われていない。
同団体はロイター宛の電子メールのなかで、「中国とカザフスタンの間で、これだけ汚染防止基準に差があることを考えれば、中国側としては、一帯一路構想のもとで、セメントの原料になる炭酸塩やシリカを豊富に埋蔵するカザフスタンにセメント生産プラントを移転すれば利益につながるだろう」と述べている。
アナリストは、中央アジア諸国の多くは、自国製造業の成長を図り、雇用を創出して輸入依存度を低下させるため、セメント生産の拡大に力を入れていると言うが、これら諸国の市場が吸収できる新たな生産能力には限度がある。
中国のセメント関連投資た集まる内陸国タジキスタンでは、政府統計によれば、2015年にはわずか500トンだったセメント輸出量が、2017年には100万トンまで拡大した。
上峰水泥のチュー副社長は、中国のセメント生産プロセスは非常に効率が良く、より大きなプラントを作りたがる傾向もあることから、生産過剰の状態を回避するのは困難かもしれない、という。
「その国に最初に進出する企業になれれば問題はない」と彼は言う。「だが、ある国に2─3社がプラントを建設するようになると、あっというまに生産過剰状態に陥る可能性がある」
(翻訳:エァクレーレン)
[杭州(中国)/シェリ(カザフスタン) 31日 ロイター]
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