最新記事

中国経済

一帯一路で「汚染輸出」と批判の声 中国セメント業界、環境規制強化と需給過剰で海外進出へ

2019年2月5日(火)12時00分

環境保護団体グリーンピースでグローバル大気汚染部門の主任アナリストを務めるローリ・ミリバータ氏は、「中国企業が工業投資の候補地としている国々のほとんどは、排出物規制・環境基準とその実施状況が非常に弱い」と言う。

「こうした規制の空白を突いて投資が行われているのは実に心配だ」

カザフスタンの環境保護団体アソシエーション・オブ・プラクティシング・エコロジストによれば、カザフスタンには欧州連合(EU)や中国で導入されているような全国レベルでの統一的な汚染防止基準が存在せず、セメント生産プラントの水銀排出物については監視が行われていない。

同団体はロイター宛の電子メールのなかで、「中国とカザフスタンの間で、これだけ汚染防止基準に差があることを考えれば、中国側としては、一帯一路構想のもとで、セメントの原料になる炭酸塩やシリカを豊富に埋蔵するカザフスタンにセメント生産プラントを移転すれば利益につながるだろう」と述べている。

アナリストは、中央アジア諸国の多くは、自国製造業の成長を図り、雇用を創出して輸入依存度を低下させるため、セメント生産の拡大に力を入れていると言うが、これら諸国の市場が吸収できる新たな生産能力には限度がある。

中国のセメント関連投資た集まる内陸国タジキスタンでは、政府統計によれば、2015年にはわずか500トンだったセメント輸出量が、2017年には100万トンまで拡大した。

上峰水泥のチュー副社長は、中国のセメント生産プロセスは非常に効率が良く、より大きなプラントを作りたがる傾向もあることから、生産過剰の状態を回避するのは困難かもしれない、という。

「その国に最初に進出する企業になれれば問題はない」と彼は言う。「だが、ある国に2─3社がプラントを建設するようになると、あっというまに生産過剰状態に陥る可能性がある」

(翻訳:エァクレーレン)

Brenda Goh and Mariya Gordeyeva

[杭州(中国)/シェリ(カザフスタン) 31日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

仏クレディ・アグリコル、第1半期は55%増益 投資

ビジネス

ECB利下げ、年内3回の公算大 堅調な成長で=ギリ

ワールド

米・サウジ、安全保障協定で近く合意か イスラエル関

ワールド

フィリピン船や乗組員に被害及ぼす行動は「無責任」、
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中