一帯一路で「汚染輸出」と批判の声 中国セメント業界、環境規制強化と需給過剰で海外進出へ
中国の国営メディアによれば、中国国内では、環境汚染の摘発が進んで何百カ所ものセメント生産プラントが閉鎖された。中国セメント協会によれば、中国は2020年までにセメント生産能力を、全体の10分の1にあたる約4億トン削減することを目指しているという。
業界誌「グローバル・セメント」によると、葛洲堰集団、安徽海螺水泥、上峰水泥といった中国のセメント大手は2018年、アフリカ、アジア、南米地域で少なくとも18カ所、年間生産能力にして合計2000万トン以上のプラントに投資すると発表した。これはほとんどの欧州諸国の生産量を上回る規模だ。
葛洲堰集団は新たなチャンスをつかむことに熱心だと、同社がシェリに設けた子会社でゼネラルマネジャーを務めるリー・ジンチン氏は話す。
「我が社は中国国内に17カ所のセメント生産プラントを持っているが、カザフスタンではここが初めてだ」と彼は言う。「中央アジア諸国、特に西部を中心とするカザフスタンでは今後もプラントを建設することを計画している。すべては市場次第だが」
生産過剰の問題
中国は過去5年間、セメントなどの素材生産に先進的な汚染防止テクノロジーを導入し、厳格化された基準を満たすことを企業に義務付けており、「絶対に必要」と見なされるプロジェクトを除いて、セメント生産設備の新設は禁止されてきた。
また、汚染レベルが高い期間は、プラントは操業を停止せざるをえなくなっている。
杭州市に本拠を置く上峰水泥も、キルギスタンとウズベキスタンでのプラント建設により拠点の拡大を図っている中国企業の1つである。
同社のチュー・フイ副社長はロイターとのインタビューで、「中国国内における生産過剰の状況は非常に深刻になっている。私たちが一帯一路沿いの諸国への進出を検討しているのは、それが理由だ」と語った。
「中国のセメント生産能力は現在30億トン以上だ。だが現実には、約22億トンの需要しかない」
また同副社長によれば、上峰水泥は国外での生産ライン建設に向けて中国輸出入銀行から6800万ドル(約74憶円)の低利融資を受けているが、これは「一帯一路」構想に基づいて提供されたものだという。
「融資の承認は非常に迅速で、政府はとても協力的だった」と彼は言う。
中国企業は、他国で建設しているプラントには最新のテクノロジーを利用し、必要なフィルターを装備し、現地の環境基準を遵守していると主張する。
だが環境保護団体によれば、中国の急速な工業化に付きまとっていた環境汚染問題が輸出されてている懸念があるという。