最新記事

イラン

仏独英が新組織発足、ドルを介さずイランとの貿易維持へ 米国の制裁に対抗

2019年2月1日(金)10時40分

仏独英の3カ国は、ドルを介さずにイランとの貿易を行うための特別目的事業体(SPV)を正式に発足したと明らかにした。写真はイラン国旗と石油基地の煙炎。2005年7月にペルシャ湾で撮影(2019年 ロイター/Raheb Homavandi)

仏独英の3カ国は31日、ドルを介さずにイランとの貿易を行うための特別目的事業体(SPV)を正式に発足したと明らかにした。米国の対イラン制裁再開後もイランとの貿易を継続する。

米国は昨年、欧州主要国の反対を押し切ってイランと主要国が2015年に合意した核合意を離脱し、経済制裁を再発動させた。

イランも、欧州が同国の経済的利益を保証しない限り核合意から離脱するとしていた。

欧州は、イランが核合意を順守することを条件に欧州企業とイランの取引を支援する方針を示していた。

新組織の名称は「貿易取引支援機関(INSTEX)」で、フランスで登録された。仏独英が株主で、今後他国の参加も期待されている。

イランが石油とガスを輸出し、代わりに欧州連合(EU)から製品を購入するなどの制度が検討されている。ただ、現実的には、人道支援のための製品や食糧などを対象とした小規模の取引にのみ使われる見通しという。

ある外交筋は「この制度で状況が大きく変わるとは思わないが、われわれがイランとの取引を継続する決意であるという政治的なメッセージを送るためには重要だ。また、米国の治外法権のような制裁にも関わらず、自身の利益をわれわれが守るという姿勢を米国に示すことができる」説明した。

EUは、数カ月の協議を経て今回の組織を発足。活動開始まではさらに数カ月かかるとみられる。

ハント英外相は、仏独英が最終合意に向けイランと密に協力していると説明し「(組織の)登録は大きな一歩だが、まだやるべきことが多くある」とコメントした。

イランのアッバス・アラグチ外務次官は、この仕組みは好ましい最初の一歩だと評価した。

今後、INSTEXの予算確保や規定策定が必要となる。また、イランも同様の組織を立ち上げる必要がある。

[パリ/ベルリン 31日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中