最新記事

トランプ支持者

「壁」なんてくだらないと、トランプ支持者が怒りはじめた

Trump Voter Slams Shutdown: 'It's Ridiculous'

2019年1月23日(水)19時00分
ジェイソン・レモン

トランプ支持者から、壁なんて「馬鹿げている」の声も(メキシコとの国境近くで「壁」の試作品の前に立つトランプ) Kevin Lamarque-REUTERS

<「国境の壁」にこだわるあまり政府機関の一部閉鎖を長引かせるトランプに支持者からも批判の声>

2016年11月の米大統領選でドナルド・トランプに投票した有権者たちが、不満を募らせている。メディアの報道や世論調査の結果を見る限り、不満の矛先は、「国境の壁」の建設にこだわるあまり1カ月以上も政府機関の閉鎖を続けるトランプの姿勢に向けられているようだ。

ミシガン州に住む45歳の機械技師、ジェレマイア・ウィルバーンは、1月21日付けのワシントン・ポスト紙にこう語る。「トランプ大統領には特に不満はなかった。今度の政府機関閉鎖まではね」 

2016年の大統領選ではトランプに投票した。「ばかげた話だ。メキシコとの国境に50億ドルもかかる壁を作るなんて不可能だ。メキシコがその費用を払うはずもない。そんなことはお見通しだ。私のようにトランプに背を向ける支持者も出始めている」

ウィルバーンは、政府機関閉鎖がアメリカ経済に与える影響と、閉鎖された運輸保安局(TSA)の職員をしている兄のことが気がかりだと語った。

トランプと米議会の対立で政府予算が成立しないため、2018年のクリスマス前から一時帰休や自宅待機を余儀なくされている政府職員は全米で約80万人。TSAおよび税関・国境警備局(CBP)の職員もこの中に含まれている。

ウィルバーンと同じくミシガン州在住で、トランプに投票したという38歳のエリカ・マックイーンも、トランプによる政府機関閉鎖への懸念を語った。「国境の壁の問題は、手に負えなくなりつつある。こんなのはバカげている。もう『壁』について目にするのも話を聞くのもうんざりだ」

岩盤支持層も心変わり

トランプに投票した有権者からのこのような声は、最近の世論調査の結果とも一致する。これらの調査によると、現在も収束の見通しが立たない政府機関閉鎖について、アメリカ国民の過半数が、トランプに責任があると回答した。他方、民主党が提示した政府機関の再開案を支持すると答えた人は63%に達した。

強固なトランプ支持層の間でも、トランプの人気は低下傾向にある。公共ラジオNPRの調査では、キリスト教福音派の保守的白人層からの支持率も、2018年12月から2019年1月までに13ポイント低下した。大学を出ていない白人男性の支持率も、同期間に6ポイント低下した。

1月22日の時点で、政府機関の一部閉鎖は31日。過去最長だった21日間をとうに超えた。トランプが57億ドルの「国境の壁」建設費用を含まない予算案への署名を拒否し続ける中、政府機関の再開にめどは立たない。

民主党議員や多くのアナリストは、壁の建設には莫大な費用がかかるだけでなく、不法移民を阻む効果もないと主張する。だがトランプは、アメリカ南部のメキシコとの国境周辺で危機が起きているという主張を変えていない。

政府機関の閉鎖による経済的損失は、当初ホワイトハウスが予測していた数字の2倍に達したとみられる。NPRによれば、大統領直属のエコノミストでさえ、政府機関閉鎖により失われる経済成長は、当初予想された「2週間で0.1%」ではなく、「1週間に0.1%」だと認めている。民間の専門家は、影響はさらに深刻だと予想している。

(翻訳:ガリレオ)

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベネズエラ、外貨減少とインフレ上昇に直面へ 米の「

ビジネス

マイクロン四半期利益見通しが予想超え、AI需要追い

ビジネス

お知らせ-重複記事を削除します

ビジネス

NZ経済、第3四半期は前期比+1.1% プラス成長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中