最新記事

世界経済2019

ビットコイン価格の乱高下は、投機ではなく投資になるまで続く

2019年1月22日(火)16時30分
ニキル・クマール

ビットコインの価格は19年の年初の水準からまだ大幅に下がる恐れがある Illustration by Ershui1979/iStock.

<仮想通貨の透明性の欠如と市場のファンダメンタルズに対する理解不足が相場を読みづらくしている>

仮想通貨ビットコインの下落傾向が止まらず、1ビットコイン(BTS)の価格が3000ドルを割り込む可能性も出てきた。大方の予想では2000~3000ドルの間で落ち着くとみられている。3800ドル近辺で推移している19年の年初の水準から、まだ大幅に下がる恐れがあるということだ。

ビットコインは17年12月17日に史上最高価格(1万9783ドル)を記録した後、18年には下落基調に転じた。特に11月は月初に6300ドルを上回っていた価格が月末には4000ドルを割り込み、月間ベースで35%超の大幅下落となった。

危機管理が専門で、カントリーリスク・ソリューションズCEOのダニエル・ワグナーは、今年も乱高下が続くと予想する。「ピーク時の10~15%程度、2000ドル前後でいったん落ち着き、そこから再びバブル相場へと転じるとみている。この予想に外れはないだろう」

一方、調査会社コンティニュアム・エコノミクスのマイク・マクドナルド上級テクニカルストラテジストは、ここ数カ月内に3000ドルを割った後は2500ドル近辺で落ち着くのではないかと予想。いま下落が止まらないのは「相場の乱高下に恐れをなした投資家が資金を引き揚げたせい」とみる。

18年5月下旬にも「心理的な節目」とされた7500ドル割れの後で若干持ち直す場面もあったが、長くは続かなかった。9~10月に6000~7000ドルあたりで落ち着くかに見えた途端、11月の大暴落に見舞われた。「弱気になった個人投資家たちが一斉に売りに回った」ことと同じことがいま起きていると、マクドナルドはいう。

「誕生から約10年、仮想通貨の暴落は珍しくない。今回はその幅が大きかっただけ」とワグナー。規制や監督の強化の不確実性のみならず、仮想通貨自体に対する信頼の揺らぎが、相場の足を引っ張っていると指摘する。

ビットコイン価格の安定には、投機ではなく投資として育てる視点が必要だとアナリストたちは言う。透明性の欠如と、市場のファンダメンタルズに対する理解不足が相場を読みづらくしている。仮想通貨取引の半分以上が追跡不可能なダークウェブ(闇ウェブ)で行われているというが、こうした取引を市場から締め出せば、これほど大幅な乱高下は減るかもしれない。

まずは資産の定義から

相場が安定すれば、ビットコインは資産の一種として認識されるようになるだろう。すると新たな問題、つまり仮想通貨をどの「資産」に分類すべきかについて、アナリストの間に共通認識がないという問題が浮上しそうだ。

資産としての地位を確立するためには、金融当局は「投資商品」として定義し、規制・監督する法整備を行う必要に迫られるだろう。金に代わる投資対象とみるアナリストもいれば、外国通貨と競合すると考えるアナリストもいる。

ワグナーは「まだ存在しない」新しい資産に位置付けられるようになると予想。特質上、通貨よりもある種の証券に近いと考えている。「おそらくその分類が最も合理的で、当局にとっても都合が良い」

資産分類が確定すれば評価も高まり、それが追い風となり、市場に上昇機運が出てくるかもしれない。だがそれには数年かかるだろうとワグナーは言う。

「法規制の整備が進み状況が一変するとしても、それまでは今のような乱高下が続くだろう」

<本誌2019年01月15日号掲載>

※2019年1月15日号(1月8日発売)は「世界経済2019:2つの危機」特集。「米中対立」「欧州問題」という2大リスクの深刻度は? 「独り勝ち」アメリカの株価乱降下が意味するものは? 急激な潮目の変化で不安感が広がる世界経済を多角的に分析する。

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

焦点:税収増も給付財源得られず、頼みは「土台増」 

ワールド

米、対外援助組織の事業を正式停止

ビジネス

印自動車大手3社、6月販売台数は軒並み減少 都市部

ワールド

米DOGE、SEC政策に介入の動き 規則緩和へ圧力
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中