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2019年はどんな年?金融市場のテーマと展望

2018年12月21日(金)16時00分
上野 剛志(ニッセイ基礎研究所)

師走に入り、今年も残すところ1カ月を切った。少々早いものの、今年の金融市場を振り返り、来年の市場のテーマと動向を展望したい。

(2018年の振り返り・・・トランプ政権に翻弄された一年)
まず、2018年のこれまでの市場の動きを確認すると、ドル円レートは年初113円でスタートした後、春にかけて急速な円高が進行、一時的に105円の節目を割り込んだものの、その後はドルが持ち直し、現在は年初とほぼ同水準に戻っている。いわゆる「行って来い」の形となった。一方、日本株(日経平均株価)は、年初22700円台でスタートした後、円高と歩調を合わせて大きく下落、一時21000円を割り込んだが、ドル円の回復とともに秋にかけて持ち直し、10月上旬には24200円台に達したが、その後急落、足元では21600円台にある。つまり、これまでのところ、ドル円は底堅い一方、株価はやや下落している。

今年の金融市場の特徴としては、トランプ政権の政策の影響を大きく受けたという点が挙げられる。(昨年末に成立し)年初からスタートした大規模減税や政府歳出拡大の効果を受けて米国の経済成長率は加速。欧州や中国などの成長率が減速するなかで「米国一強」とも言われる状況が作り出された。こうした好調な経済・物価情勢を受けて、FRBは段階的に利上げを実施し、米金利は大きく上昇した。一方、トランプ政権は今年に入ってから保護主義の動きを強め、中国を中心に輸入品に対する関税引き上げを連発。世界経済への悪影響が懸念されるようになった。

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為替市場では、トランプ政権発の貿易摩擦への懸念や米金利上昇に伴う新興国からの資金流出などに伴ってリスク回避的に円が買われ、多くの通貨に対して円高が進んだが、米経済への信頼感や米金利の上昇を受けてドルも買われたことで、ドル円レートでは概ね横ばいを維持することになった。

一方、株式市場では、好調な米経済が一定の下支えとなったものの、貿易摩擦に伴う中国経済減速懸念や新興国からの資金流出などが下落要因となった。また、為替ではドル高に働いた米国の利上げに伴う金利上昇が米株価にとっては逆風となり、日本株の抑制に働いた面もある。

その他にも、欧州の政治問題(英国のEU離脱やイタリア財政など)や日銀の金融緩和縮小観測なども円高・株安材料としてたびたび浮上したが、市場への影響力という点では、あくまで脇役に留まった。主役はやはりトランプ政権の政策であったと言える。

今月もまだFOMCや英国のEU離脱採決などの重要イベントを残しているが、「2018年はトランプ政権に翻弄された一年」と総括できるだろう。

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