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「気味が悪い」、だから自閉症児向けセラピーに役立つ

Droid Therapy

2018年12月17日(月)12時40分
シーラ・ルービン

マイロはしゃべりながら顔の表情を変え、人間相手の交流を練習させる COURTESY IF ROBOKIND

<人間同士のコミュニケーションに踏み出す前に、ロボットを相手に練習すれば子供たちも安心する>

カーペットに座った2歳の自閉症児リオ・ブラカリエッロが凝視しているのは、童謡の「幸せなら手をたたこう」を一本調子で歌うロボットの顔。リオが母親に「もう一回」とつぶやくと、ロボットは望みに応じた。

このソーシャルロボット「カスパー」は、近くの英ハートフォードシャー大学から貸与されたもの。リオはカスパーと数回交流しただけで、誰かの視線の先を追う「視線追従」を行うようになった。人と交流する上で大切な一歩だが、自閉症児には困難な行動だ。半年もするとリオはカスパーのしぐさと歌と言葉を記憶するようになり、ゲームで興奮する度合いが高まった。

WHO(世界保健機関)の推定では、世界の子供の約160人に1人が自閉症だ。彼らは一般的に社会行動やコミュニケーション、言葉に関する障害があり、関心や活動の範囲が狭い傾向がみられる。そうした問題の軽減にロボットが役立った、と話すセラピストは多い。

批判的な見方もあるが

多くの親はカスパーを初めて見たとき、気味が悪いという印象を抱く。だが、人間と違って顔の表情が豊か過ぎない点が、自閉症児にはいいと、開発責任者のベン・ロビンズは言う。

言語療法士や親と違い、ロボットの忍耐力は無限だ。相手に対して判断を下さず、想定外の行動も取らない。

カスパーの言葉やしぐさ、歌は簡単で基本的なもの。どんな症状の自閉症児も、人との交流に使えるやりとりが学習できるようにするためだ。自閉症児の苦手な「社会的想像力」、つまり他人の思いを理解し、説明し、予想する能力も鍛える。だから子供が自発的にカスパーと触れ合っているとき、ロビンズはカスパーに「不安」や「喜び」といった気持ちを表現させる。

ロボットの利用に批判的な人もいる。米ワシントンで自閉症の人々の支援活動をするセーラ・ルターマンに言わせれば、ロボットは「見掛け倒しで高くつく浪費」。精神医療や住宅などもっと切実な問題に資金を注ぐべきだと彼女は考えている。

ロンドン西部に住むデビーアン・ロビンソンの意見は違う。自閉症の5歳の息子マシューはある晩、米ロボカインド社製の自閉症児向けのソーシャルロボット「マイロ」をテレビで見て目を輝かせたという。ロビンソンは5000ドルで1体購入した。彼女がそんな話をするそばで、マシューはマイロと挨拶の「ハロー」「ハーイ」「ヘイ」の区別を学ぶゲームに興じ、笑いころげていた。

ロビンソンは自閉症児のための幼稚園を始めたいと思っている。「自分たちがリスク覚悟で行動しないと、子供たちも前に進めないから」

<2018年12月18日号掲載>



※12月18日号は「間違いだらけのAI論」特集。AI信奉者が陥るソロー・パラドックスの罠とは何か。私たちは過大評価と盲信で人工知能の「爆発点」を見失っていないか。「期待」と「現実」の間にミスマッチはないか。来るべきAI格差社会を生き残るための知恵をレポートする。

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