最新記事

朝鮮半島

南北の雪解け急ピッチ、非核化は置き去り

North and South Korea Troops Cross Border for Peace

2018年12月13日(木)15時30分
トム・オコナー

小さいが大きな一歩(12月12日、非武装地帯で握手を交わす北朝鮮と韓国の兵士) South Korean Defence Ministry/ REUTERS

<非武装地帯の監視所撤去を相互に検証>

北朝鮮と韓国の兵士が北緯38度の軍事境界線を平和的に越えた──北の兵士は南へ、南の兵士は北へ──南北融和の進展を印象づける新たな一歩だ。

今年9月の南北首脳会談後に南北の国防トップが署名した軍事分野の合意書に基づき、軍事境界線を挟む幅4キロの非武装地帯(DMZ)では、計22カ所ある南北双方の監視所が試験的に撤収され、このほど南北両軍がその検証作業を実施することになった。

韓国国防省は12月12日、「分断後初めて南北両軍が相互検証を行った」と発表。第二次大戦後の1950年、冷戦が進むなか米ソの代理戦争として始まった朝鮮戦争は多大な人的被害を出し、1953年に休戦協定が締結された。以後正式に終戦が宣言されないまま、北緯38度線を挟んで南北はにらみ合いを続けてきたのだ。

韓国国防省によると、南北双方の検証班が「火器、装備、兵員の撤収、地上施設の解体、地下施設の埋め戻しと破壊」を確認した。「南北の相互検証は友好的な雰囲気で実施され、南北双方は互いの多様な要求に積極的に応じ、協力して検証作業を進めた」

米朝会談が後押し

2000年代に入って南北融和を目指す動きはあったものの、昨年まで首脳会談が行われたのはわずか2回。いずれも思想的な隔たりを埋められず、統一の夢は遠のくばかりだった。しかし今年に入って、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は3回会談を重ね、9月の会談では「朝鮮半島で戦争を起こす恐れがあるあらゆる脅威をなくす」ことで合意した。

南北融和ムードの背景には、韓国が最も頼りにする後ろ盾アメリカの方針転換がある。ドナルド・トランプは現職の米大統領としては初めて、今年6月シンガポールで北朝鮮の最高指導者と会談。北朝鮮の核開発をめぐり昨年には一触即発の危機にあった米朝が和平に向けて舵を切り、直接的な対話を始めた。

ただし、米朝の主張には隔たりがある。米政府は「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」を要求。体制維持のために長年ひそかに核開発を進めてきた北朝鮮は、非核化の条件として制裁解除と朝鮮戦争の正式な終結宣言を主張している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市・林両氏、台湾巡る対話や防衛力強化重視 米シン

ワールド

ゼレンスキー氏「ロは原子力事故リスク創出」、意図的

ワールド

台湾、「侵攻の法的根拠作り」と中国批判 71年国連

ワールド

米、ウクライナに情報提供へ ロ領内奥深くのエネ標的
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」してしまったインコの動画にSNSは「爆笑の嵐」
  • 4
    なぜ腕には脂肪がつきやすい? 専門家が教える、引…
  • 5
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 6
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 7
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 8
    アメリカの対中大豆輸出「ゼロ」の衝撃 ──トランプ一…
  • 9
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 3
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけではない...領空侵犯した意外な国とその目的は?
  • 4
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 5
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 6
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 7
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中