最新記事

中国

華為Huaweiを米国に売ったのはZTEか?──中国ハイテク「30年内紛」

2018年12月12日(水)13時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

ハイシリコンが外販をしない理由の一つには、今回のコラムで述べたZTEと華為の間の「30年内紛」が横たわっているのである。

実は窮地に追い込まれている習近平

国家戦略「中国製造2025」を国家命運の分岐点として推し進めている習近平国家主席は、実はこのような国内の「内紛」によって窮地に追い込まれているのである。

一党支配体制なのだから、サッサと華為とその子会社ハイシリコンに「半導体の成果を渡せ」と強制すれば、できるはずだろうと、外部からは見えるかもしれない。

それができないのは、ハイシリコンの勢いがあまりに凄いからだ。

たとえばTrendForceが2017年11月に調査した「2017年中国IC関係企業の収益ランキングと収益額」を見ると、

  1位:ハイシリコン・・・・・・・・・・・・ 387

  2位:ユニグループ・スプレッドトラム・・・ 110

  3位:ZTE・セインチップス・・・・・・・・   75

                 (単位:RMB $100million)

となっている。2位のユニグループも3位のZTEも国有企業で、スプレッドトラムはユニグループが買収した半導体企業、セインチップスもZTEが傘下に置いた半導体企業である。いずれも中国政府が間断なく豊富な資金を降り注いでいるにもかかわらず、民間のハイシリコンに負けているのはなぜか。なぜハイシリコンがトップを走り続けているのか?

新しい民主化の形?

人気があるからだ。

若者が「一党支配体制を好んでいない意思表示」を、華為のハイテク製品を購入することによって表現しているのである。これは、一種の、経済力を付けてきた若者たちによる、新しい形の選挙に等しい。

筆者は少なからぬ中国の若者を取材してきた。

異口同音に言うことは「華為(ホァーウェイ)は頑張ってます。私たちは華為を、そして何よりもハイシリコン(海思、ハイスー)を応援しています!」という声だ。「国有企業なんて、誰が応援するものですか!私たちは、何を買うかによって、一党支配体制への無言の抵抗を表現しているのです!ほかにどんな手段がありますか?」と、本音を教えてくれる若者さえもいる。

おお――!

これは中国の新しい民主化の形なのかもしれない。

孟晩舟が本当は何をしたのか、明らかになるのは、いいことだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏CPI、4月はサービス上昇でコア加速 6月

ワールド

ガザ支援の民間船舶に無人機攻撃、NGOはイスラエル

ワールド

香港警察、手配中の民主活動家の家族を逮捕

ビジネス

香港GDP、第1四半期は前年比+3.1% 米関税が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中