最新記事

中国

華為Huaweiを米国に売ったのはZTEか?──中国ハイテク「30年内紛」

2018年12月12日(水)13時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中国政府に売り渡せば、必ずZTEに行くことは分かっている。だから、今の状況であるならば、まだ売り渡していないのである。

ユダヤ系アメリカ人法律顧問の怪しげな動き

2011年10月、ZTEはユダヤ系アメリカ人のAshley Kyle Yablon氏をアメリカ支社の法律顧問として採用した。しかし困った時にZTEを守るために雇用されたはずのYablonは、守るためには会社の内部情報を全て掌握しなければならないということを口実としてZTEの「極秘文書」を閲覧した。

そのとき、ZTEが、アメリカが禁止している電子機器を架空会社を通してイランに売却していることが分かった。それを指摘すると、ZTEの経営者側が「表沙汰にしないように」とYablonに頼んできた。Yablonが断わると、ZTE側はYablonの業務活動を凍結してしまったとのこと。

そこでYablonは2012年5月に、FBIにZTEの内部事情を告発したのだと、多くの中国大陸以外の中文メディアが書いている。一部は、類似の大陸情報さえある。

ロイター社によれば、Yablonは華為の法律顧問でもあったという。

こんなに「きれいに(単純に?)」展開するストーリーというものが、あるだろうか?

Yablonこそが逆に、アメリカ政府が雇用したスパイである可能性がなくはないと、誰でもが推測してしまうだろう。「デキ過ぎ」ている。

中文メディアは続ける。

今般の華為CFO孟晩舟の逮捕は、これまでの流れから見て、「ZTEがアメリカに密告したと見るべきではないか」というのである。

ZTEが華為をアメリカに売った?

その証拠に、Yablonが押さえたZTEの秘密文書の中に、「F7」という会社名があって、どうやら、これが華為のことらしいという。そこには「F7」は、2010年末に、イランの電子通信会社(TCI)の子会社であるイラン移動通信会社(MCI)にアメリカのヒューレット・パッカード制のコンピュータを販売する案を提出していたという記録があるという。華為は2011年にはその提案を撤回したようだが、ほかにも多岐にわたって華為の内部情報が書いてある。それらの情報をZTEが司法取引としてアメリカ側に密告したのだと、香港のリベラルなメディア「リンゴ日報」やワシントンあるいはニューヨークにある中文メディアなどが報じている。

外販しないハイシリコンの半導体

ハイシリコン社が研究開発した半導体は絶対に外販しないことは、日本の半導体専門家も述べている。12月8日のコラム「Huaweiの頭脳ハイシリコンはクァルコムの愛弟子?」で書いたように、テカナリエの清水洋治氏は「わずか6年で世界トップに、中国半導体メーカーの実力」という講演の中で「'''トップレベルの半導体メーカーを持つHuawei'''」と、ハイシリコン(HiSilicon)社のことを絶賛し、「HiSilicon社は外販をしていません。Huawei社のためのHuawei社によるHuawei社のためのチップなのです。これほど高性能のチップを、中国の他のスマホメーカーに供給し始めたら、Qualcomm社もMediaTek社もあっという間に市場を失ってしまう可能性があります。」と仰っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBが3会合連続で0.25%利下げ、反対3票 緩

ワールド

復興計画の原則で合意とウクライナ大統領、クシュナー

ビジネス

オラクル9-11月決算、注目指標が予想に届かず 時

ビジネス

ブラジル中銀、4会合連続で金利据え置き タカ派姿勢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 9
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中