最新記事

中国

Huaweiの頭脳ハイシリコンはクァルコムの愛弟子?

2018年12月10日(月)08時45分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

Qualcomm社が「Snapdragon」の新製品を出せば、HiSilicon社は「Kirin」の新製品を出す。スマホ用プロセッサーにおける世界トップレベルの激しいスペック競争の中に、中国メーカーが入ってきたのです。Qualcommなどの名だたるメーカーを席巻する勢いで、中国の半導体メーカーが台頭、躍進する。こうした状況が、2013年以降、続いています。

HiSilicon社は外販をしていません。Huawei社のためのHuawei社によるHuawei社のためのチップなのです。これほど高性能のチップを、中国の他のスマホメーカーに供給し始めたら、Qualcomm社もMediaTek社もあっという間に市場を失ってしまう可能性があります。

2015年、Qualcomm社が「Snapdragon 805」を出したときに、HiSilicon社は「Kirin 925」を出してきました。ほぼ同じ性能を、同じプロセス、同じ通信速度で実現している点で、本当の意味で「中国が世界のトップに躍り出た」といえるものでした。2015年以降、中国の半導体メーカーを抜きに、世界の半導体動向を判断することはできなくなりました。(引用は以上)

中国に追い越されないために日本は真相を直視する勇気を!

ここで注目していただきたいのは、清水氏が

「HiSilicon社は外販をしていません。Huawei社のためのHuawei社によるHuawei社のためのチップなのです。これほど高性能のチップを、中国の他のスマホメーカーに供給し始めたら、Qualcomm社もMediaTek社もあっという間に市場を失ってしまう可能性があります。」

と仰っている点だ。

何も筆者だけが言っているのではない。筆者が書くと、「中国の回し者が」という類の心ないバッシングを受けるが、日本の最高権威の半導体専門家が書いておられることなら、日本人も信用してくれるだろう。

いま日本が直視しなければならないのは、中国の真相であって、耳目に心地よい中国への罵倒だけではないはずだ。

日本国民の利益を本気で守る気があったら、中国の現実と習近平の野望を見抜かなければならない。そうしてこそ日本を守ることができる。そうしなければ、日本はもっと中国に追い越される。

それでいいのか?

筆者が1992年の天皇訪中という日本の政権の選択がいかに間違っていたかを言い続けるのも、その真相を見てほしいからだ。その証拠に、日本は2010年からGDPにおいて中国に負け、今では中国の3分の1にまで下落したという体たらくだ。

日本はこのままでいいと思うのか?

同じ過ちを二度と繰り返したくないとは思わないのか?

このまま真相から目を背ければ、日本は中国に惨敗する。

筆者には日本を守りたいという切なる思いしかない。だからこそ、安倍首相が習近平に「一帯一路」への「協力を強化する」と誓ったことに賛同できないのである。天皇訪中の二の舞を招くことは明らかだからだ。

日本国民の利益を守るために、どうか真意を理解していただき、真相を直視していただきたいと切望する。

endo2025.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』(2018年12月22日出版)、『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中英文版も)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、6月予想外の3.3万人減 前月も

ワールド

EU、温室効果ガス40年に90%削減を提案 クレジ

ビジネス

物価下振れリスク、ECBは支援的な政策スタンスを=

ビジネス

テスラ中国製EV販売、6月は前年比0.8%増 9カ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 3
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 4
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 5
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 10
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 7
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 8
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 9
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 10
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中