最新記事

ライフスタイル

データで見る「ニッポンの独身者は誰と暮らしているのか」-「結婚のメリットがわからない」独身者の世帯(居場所)のカタチとは-

2018年11月9日(金)13時30分
天野馨南子(ニッセイ基礎研究所)

20代~40代の独身男性は、両親のみ、または母親のみとの同居といういわゆる「親子密着世帯」が半数を超えた。親だけでなく祖父母なども含めた親族だけで構成される身内世帯に住む独身者となると、20代から40代まで全て6割超で推移する。

20代・30代は年齢的には、親の介護等での同居が6割にのぼるとはまだ考えにくいため、何らかのメリットが双方にあり、学生時代の生活の延長のような世帯を6割の独身男性が親族と続けており、そのままの割合で40代に移行することがみてとれる。

50代以降(その両親は70代以上になると予想される)、親の介護等で同居が増加することも予想したものの、逆に親との同居率は減少し、代わりに、ひとり暮らしやきょうだいのみでの同居が増加する。親が施設に入る、他界する等で親との同居を中止・終了しているようにも見てとれるデータとなっている。

独身男性のひとり暮らしは40代までは3割にとどまるが、親を中心とする親族との同居解消にともない50代以降は急増し、60代では6割にのぼる。

データからは、50代という老年の入り口から慣れないひとり暮らしに移行する独身男性が相当数存在する、という社会的には不安な状況が示唆されているといってよいだろう。

2|独身女性のケース-50代まで極めて高い親との同居率、60代から独立?

次に、独身女性が年齢ゾーン別にどのような世帯に住んでいるかをみてみたい(図表5)。

amanochart5555.jpg

20代から50代まで女性の方が男性に比べて親や親族との同居率高い。約7割の独身女性が40代まで親や身内だけとの同居を続けている。

一方、ひとり暮らしは約3割程度で40代まで推移する。

親子年齢差的には50代あたりから親の介護が発生すると考えられるため、親との同居比率が50代から増加するかとも考えられたが、男性同様、50代から大きく減少してゆく。

50代で両親のみと同居していた同率の独身女性が、(両親との同居がなくなる代わりに)きょうだいのみの同居に移行しているところも興味深い。

いずれにしても独身女性の大半は「なんとかして身内密着型世帯維持」で暮らしていることが男性より強く示唆されている。

4――同棲・結婚などパートナーを持つことの経済メリットを無効化する「親族密着世帯」依存の生き方

1|「長期子どもポジション・キープ」というメリット

筆者がこの分析結果から感じるのは「これでは初老になるまでパートナーを持つメリットなど感じられないのではないか」ということである。

先にも述べたが、1人世帯よりも2人世帯の方が生活にかかるコストは一般的には約7割に減少する。これがパートナーを持つ大きなメリットの1つともいえる。

しかし両親と3人世帯であれば1人当たりコストは6割にまで減少する。祖父母も住んでいるのであれば、5人世帯でコストが5割を切る。親や祖父母にも当然この同居メリットはある。

つまり身内から若い男女が離れられない根拠の1つはこの同居メリットであるともいえる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪就業者数、8月は5400人減に反転 失業率4.2

ビジネス

イーライリリー経口肥満症薬、ノボ競合薬との比較試験

ワールド

トランプ氏、反ファシスト運動「アンティファ」をテロ

ビジネス

機械受注7月は4.6%減、2カ月ぶりマイナス 基調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中