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トランプが中間選挙でやり玉にあげる中米の移民キャラバン 今も米国目指して北上中

2018年11月6日(火)17時00分

旅に出た理由

日の出から2時間後の午前9時、キャラバンの先頭集団がピヒヒアパンに到着した。

そのはるか手前では、エスコバル家の兄弟が歩いては立ち止まり、ジグザグに歩いて茂みに入ったかと思うと、また歩き出しては立ち止まっていた。

「もう何日もずっと歩き続けている。この辺で少し休もうか」

エスコバルさんが、飛び跳ねてふざけながら歩く兄弟に声をかけた。

兄弟たちは腰を下ろすと、すぐにレスリングごっこを始めた。マリアさんは腰を下ろすなり、リュックにもたれて眠ってしまい、兄弟が暴れても微動だにしない。エスコバルさんは、背中をぐっと伸ばして空を眺めながら、この旅に出た理由を話してくれた。

7人きょうだいの長子として生まれ、エスコバルさんは母親を助けるため、学校も刑事になる夢も諦めた。

人生が暗転したのは18歳の時だったという。仕事に向かう途中で、知り合いの男に拉致された。自力で逃げ出したが、元警察官で「バリオ18」というギャングのメンバーである男に性的暴行を受け、妊娠していた。バリオ18は、「MS13」と並び、エルサルバドルやホンジュラスの大半を勢力下に収める凶暴なギャングとして知られている。

男は姿を消した。殺されたと言われているが、遺体は見つかっていないという。

エスコバルさんは、生まれてきた女児を育てながら、別の男性の息子を産んだ。この男性は、迎えをやると約束して米国に渡ったが、1年たたないうちに別の女性と結婚したと聞かされた。

そしてエスコバルさんは、バイクタクシーのドライバーと恋に落ち、デンゼル君とアドナイ君が生まれた。だがこの男性は、物を投げつけたり、彼女や息子たちを虐待したりするようになり、ついには彼女が料理人や針仕事をして貯めた金で家賃を払っていた自宅から、彼女を追い出した。

近所の人からキャラバンのことを聞かされたエスコバルさんは、素早く荷造りした。ビニールのシート。子どもたちの衣服と、せっけん。上の子ども2人は後で迎えに来ることにして、家族の元に残した。

支援団体は、キャラバンがいつごろどの地点で米国国境に達する見通しか明言していない。多くの人がメキシコにとどまることを選び、集団がばらける可能性が高いとしている。

エスコバルさん一家が、力を奮い立たせて立ち上がった。

デンゼル君は、いくつか前の町で国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のスタッフがキャラバンに配ったパンフレットが捨てられていたのを拾い、広げて見ていた。

メキシコ政府は、キャラバンを解散させるために、メキシコ南部で亡命申請を出せば、臨時雇用と身分証を提供すると提案しているが、ほとんどの移民がその提案を蹴った。

「だめよ。米国の方がいい。すべての面で」と、エスコバルさんが息子に言い聞かせた。

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