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電力会社、伊方原発再稼動で裁判に注力 交付金依存の地元に残る不安とは

2018年11月2日(金)11時33分

四国電力を相手取った裁判で市民側についた反原発派の河合弘之弁護士は、このまま原発反対派が負け続けると、20基から25基の原発が再稼動される、と危惧する。2011年以降、数百人の市民が河合氏のようなボランティアの弁護士とともに、全国25の地裁、高裁で政府を相手取り、50件もの訴訟を起こした。四国電力は、伊方原発再稼動の承認を得るのに何カ月も費やし、3基のうち、廃炉を決めた2基を除く1基を2016年に再稼動した。

しかし、2017年12月、広島高裁は運転を差し止める決定をした。これを受け、四国電力は法務部の人員を増強、他の原発訴訟を担当した弁護士と契約した。

原発訴訟に詳しい弁護士は少ないため、電力会社からは引っ張りだことなる。山内喜明氏(76)もそうした弁護士の1人だ。1973年に伊方町の住民が原子炉設置許可の取り消しを求めて起こした裁判で、四国電力の代理人となったのが始まりだった。

現在も四国電力の代理人を務め、ほかの電力会社の多数の訴訟案件に関しても、アドバイスをしている。山内氏は、最近の訴訟について、本質的な議論にならず、「表面的」な議論になっていると指摘する。また、電力会社が、廃炉にする原発と動かすものをはっきり分けて対応するようになったとし、すでに3基ある原子炉のうち2基の廃炉を決めている四国電力は「電力会社の中でも一番賢明だと思う」との見方を示した。

四国電力は、これまでの訴訟にいくらかかったか明らかにしていないが、原子炉を止めるコストと比べると大きくはない。

四国電力では、1カ月原発を止めると、それを補う電力確保に35億円の費用がかかると説明している。

さらに福島原発事故後、規制が強化されたことに伴う安全対策に、同社は1900億円を投じた。反原発派はいくつかの裁判で勝訴している。関西電力は、何度も裁判所の仮処分決定を受け、高浜原発などの原子炉を一時停止した。だがその後、決定は高裁で覆された。

住民側で原発訴訟を戦っている海渡雄一弁護士は「以前は原発訴訟というのは、デフォルトで向こう(原発側)が勝てるような訴訟だった」と話す。四国電力は、現在もいくつかの裁判と差し止め訴訟を抱えている。広島高裁は、伊方原発3号機の再稼動が予定される日の前日(10月26日)に、住民が運転差し止めの期限延長を求めた仮処分の申し立てを却下した。

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