最新記事

デンマーク

アメリカ人は貧困層でもデンマーク人より豊か?──トランプの「フェイクリポート」にデンマーク激怒

Danish PM Blasts White House Report On Socialism

2018年10月31日(水)18時00分
ジェーソン・レモン

ベネズエラと一緒にされてカンカンのデンマーク(コペンハーゲン) ValleraTo/iStock.

<中間選挙を控え、トランプ政権は民主党の政策を「社会主義」と批判。その失敗例として北欧諸国の「貧困」に焦点を当てた>

「どちらの社会モデルが優れているか、比べてみよう」――北欧の福祉国家を「社会主義」と批判する米政府の報告書に対して、デンマークのラース・ロッケ・ラスムッセン首相は挑発的なメッセージを送った。

トランプ政権は10月23日、「社会主義の機会費用」と題する報告書を発表。世界の他の社会主義諸国とともに、デンマークをはじめとする北欧諸国の社会主義的な体制を攻撃した。

だが、デンマークのコペンハーゲン・ポストのウェブ版は、この報告書は「むしろ、共産主義政権下の中国やソ連、ベネズエラの失敗にあてはまるようだ」と皮肉った。

税制、教育、収入などに焦点をあてたこの報告書は、アメリカの生活水準はデンマーク及び北欧諸国よりも15%高いと結論づけている。

「いくつかの対策によって、アメリカの貧困世帯でさえ、北欧諸国の平均的な世帯より生活水準が上になっている」と、報告書は主張する。

デンマークの専門家や政治家は放置できず、報告書は不正確で間違っていると反論している。

「確かに、われわれは高い税金を払っている。だがそれに見合う恩恵を受けている」と、ラスムッセンはフェイスブックへの投稿で主張した。「わが国の子供たちは誰であろうと、どこの出身であろうと、教育を受けることができる。病気になれば、病院に行って治療を受けることができる。特別な健康保険に加入しているかどうかや、銀行預金の有無は関係ない」

「失業したり、困難に直面したり、支援を必要とする人に対して、わが国の社会は手を差し伸べ、正しい道にいざなう仕組みができている」

目標は若い有権者の取り込み

デンマーク議会の最大政党、社会民主党の報道官は、トランプの好きな「フェイク・ニュース」という言葉を使って、この報告書を攻撃した。また、これはアメリカの中間選挙を見据えた明らかな「脅し戦術」だとも指摘。進歩主義的な民主党候補が全米各地で大きく躍進しているため、共和党勢力は民主党の対立候補を社会主義的とレッテル付けして挽回を図っているのだ。

ワシントンにあるピーターソン国際経済研究所(PIIE)の上級研究員ヤコブ・キルケゴールは、11月6日の中間選挙投票日を間近にしたこの時期に、報告書が発表されたことは偶然ではない、と見ている。

「この報告書は、共和党の運動員が有権者を引き込むための『宣伝パンフレット』だ」と、彼はコペンハーゲン・ポストの取材で述べ、さらにアメリカにおいて社会主義は、高齢者よりも若い世代に人気があることを指摘した。

「若者は経済的な恩恵に預かる機会が少ないばかりか、教育を受けた若者の多くは多額の学生ローンを負っている。だからアメリカではかなり多くの若者が、大規模な所得再分配で格差を是正する北欧のような体制を支持している」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、自身のSNSに投稿された人種差別

ビジネス

アングル:インド「高級水」市場が急成長、富裕層にブ

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、リスク資産反発受け 円は衆

ワールド

トランプ氏、インドへの25%追加関税撤廃 ロ産石油
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 2
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 3
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入った「最強ライバル」の名前
  • 4
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 7
    鉱物資源の安定供給を守るために必要なことは「中国…
  • 8
    日経平均5万4000円台でも東京ディズニー株は低迷...…
  • 9
    【台湾侵攻は実質不可能に】中国軍粛清で習近平体制…
  • 10
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 4
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 7
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 8
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 9
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 10
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中