最新記事

ブラジル

「ブラジルのトランプ」極右候補が大統領に選ばれた理由

Far-Right Jair Bolsonaro Elected Brazil's President

2018年10月29日(月)19時20分
ジェイソン・レモン

ウッドロー・ウィルソン国際研究センター・ブラジル研究所のアンナ・プルザは、今回の選挙は「支持票ではなく不支持票」の選挙だったと語る。

「ブラジル国民は政府の失敗にいらだっていた」とプルザは言う。

ボルソナロは自分は汚職まみれの政界において「アウトサイダー」であり汚職とは無縁という印象を国民に植え付けることに成功した。

「これは『指導者ありき』の選挙だったように思える。有権者は政策を選ぶのではなく、自分たちの求める指導者に近い候補を探した」とジョタのムルタは言う。「まず候補者を選び、その後でその人の政策綱領を受け入れたわけだ」

ボルソナロは、既成勢力や制度・機関を激しく批判する選挙運動を展開した。ブラジル人が「民政移管以降、耳にしたことがないほど激しい体制批判だった」と語った。

「民主主義下で長年ずっと過ごしてきた国にとって、民主主義を脅かす直接かつ高いリスクに向き合うのは容易なことではないだろう」とムルタは言う。「だが報道機関や最高裁といった機関への攻撃は、『先にリーダーありき』型政治という文脈において懸念材料だ」

だがそのボルソナロも、法案を通すためには連立を組まざるを得ない。PTは、有権者の拒否反応にも関わらず、今もブラジル議会の多数を占める。極右大統領の権力をチェックできる立場にあるのだ。

ブラガは言う。「ボルソナロは好きと嫌いとにかかわらず、左派のブラジル社会民主党(PSDB)や中道のブラジル民主運動(MDB)、その他の中道右派や中道左派政党と組むことになる」

あとは、ブラジル国民がボルソナロに何を望むか、だ。

(翻訳:村井裕美)


【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!

気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを

ウイークデーの朝にお届けします。

ご登録(無料)はこちらから=>>


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

2回目の関税交渉「具体的に議論」、次回は5月中旬以

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米国の株高とハイテク好決

ビジネス

マイクロソフト、トランプ政権と争う法律事務所に変更

ワールド

全米でトランプ政権への抗議デモ、移民政策や富裕層優
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中