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芸能界に続いてインターポール、中国でいま何が起きているのか

2018年10月11日(木)12時40分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

北京師範大学が共同執筆したのは、いろいろな内部事情があって「仲がいい」からだ。筆者は90年代半ばから2000年代初期にかけて中国社会科学院社会学研究所の客員教授だったので、この動き方を知っている。

ファン・ビンビン事件は、中宣部が直轄することになった芸能界に対して、最初に「ほら、やりましたよ」と見せるための、「派手な実績」の一つだったのである。 習近平政権が反腐敗の手を緩めていない証しにもなったと、中国は思っているだろう。

インターポール元総裁・孟宏偉の場合

孟宏偉は2004年8月、インターポール(国際刑事警察機構、ICPO)の中国国家中心局の局長に就任した。推薦したのは当時の公安部長だった周永康だ。孟宏偉は周永康の忠実な部下だった。2016年11月にインターポール内の選挙により、総裁に選ばれた。背景には習近平政権になってからインターポールの中国の分担金が増えていったという事実がある。

孟宏偉はインターポールの総裁を務めながら、中国の公安部の副部長も兼任していた。公安部に関しては、習近平政権発足以降、つぎつぎと多くの大物が逮捕されてきたが、地方の公安局の関係者が、今年の全人代閉幕から7月までに20人ほど捕まっている。孟宏偉に関して、これら一連の人たちに吐かせて、さまざまな不正の証拠を既につかんでいたにちがいない。

3月に新組織「国家監察委員会」が発足し、何か「派手に」、「ほら、やりましたよ」とアピールできる対象として、早くから孟宏偉にターゲットを絞っていたことは容易に想像がつく。

今年4月に孟宏偉は「中国共産党公安部委員会委員」から外されている。ファン・ビンビンと同じく、この時点で国家監察委員会がターゲットを絞ったことが窺われる。孟宏偉自身も、「これは危ない」と気が付いただろう。

となると、海外のどこかに潜む「キツネ」になってしまって、中国当局の「キツネ狩り」の対象となる可能性が、この時点ではあった。習近平は反腐敗運動に当たって「虎退治」と「ハエ叩き」および海外の藪に潜んでいる「キツネ狩り」を対象としている。

孟宏偉がアメリカに亡命し、トランプ大統領を喜ばせる可能性もゼロではなかっただろう。習近平はその危険性を感じ取り、手を打ったと考えられる。トランプが中国に高関税をかけ始めたのは今年の3月。タイミングも一致する。

アメリカに亡命した郭文貴との関連

ワシントンにはアメリカに亡命していた中国人実業家・郭文貴という例がある。彼は中国指導層の有力な機密情報を握っていると吹聴し、トランプ政府と何らかの形でつながっている関係者の庇護の下にある。

2017年4月19日、ワシントンのVOA(Voice of America)は郭文貴をテレビ取材していた。ところが突然その取材が途中で切られてしまう。中国当局からの指示が出て、VOAの中に潜っている中国政府の言う通りに動く五毛党(ここでは言うならばスパイ)が中断させたらしい。

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