最新記事

領有権

資源と海洋航路で北極圏は新たな火種に ロシアとNATOにらみ合い

2018年10月8日(月)17時33分

 10月2日、北極圏にあるスバールバル諸島を領有するノルウェーは、ロシアと西側諸国との緊張が、この極寒の辺境地に波及することを恐れている。写真は、ノルウェーのエーリクセンスールアイデ外相。ニーオルスンで9月撮影(2018年 ロイター/Gwladys Fouche)

北極圏にあるスバールバル諸島は、1年のうち4カ月は太陽が昇らない。あまりの寒さで木も生えない。

島々を領有するノルウェーは、ロシアと西側諸国との緊張が、この極寒の辺境地に波及することを恐れている。北極圏に眠る貴重な石油やガス、さらに航路への関心が高まっているためだ。

北大西洋条約機構(NATO)の一員であるノルウェーは、他の加盟国に対し、国境の外からロシアをけん制するのではなく、スバールバルを集団で防衛することに力を入れるよう働きかけてきた。そして、それは功を奏している。

ノルウェーは、NATOの軍事演習としては2002年以降で最大となる「トライデント・ジャンクチャー」の中核を担うことになる。

演習は10月25日から2週間行われ、約30カ国から4万人超が参加する。東はフィンランドとバルト海から、西はアイスランドまで、陸海空の戦力が部隊を動かす。

ノルウェーはまた、自国に駐留する米海兵隊を2倍以上の規模に増やすよう米国を説得し、来年から数百人規模の兵士が北部トロムス県に派遣されることになった。北極地方にある同県は、現在の米海兵隊基地があるノルウェー中部よりロシアに近い。

「北極圏で緊張が高まるという確たる根拠はないが、他で緊張が高まれば、ここにも容易に波及しかねない」と、ノルウェーのエーリクセンスールアイデ外相はロイターに語った。

群島の1つ、スピッツベルゲン島の町ニーオルスンでインタビューに答えた同外相は、「ロシアが軍事力を、とりわけコラ半島で増強しているのが原因であることは言うまでもない」と付け加えた。極地科学の研究拠点であるこの町は、人が居住する世界最北の地だ。

ノルウェーは196キロにわたってロシアと国境を接している。ロシアの北方艦隊が拠点を置くコラ半島のセベロモルスクは、国境から100キロに位置し、一帯には海軍基地や立ち入り制限のある軍事区域が点在している。

ロシアは08年以降、6つの基地を新設または再開するなど北極圏で軍事力を増強している。これに対し、NATOは加盟国の航行の自由を脅かす可能性があると懸念している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、新誘導技術搭載の弾道ミサイル実験

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、25年に2%目標まで低下へ=E

ビジネス

米国株式市場=ダウ終値で初の4万ドル台、利下げ観測
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中