最新記事

宇宙探査

ボイジャー2号がいよいよ太陽系から離脱しインターステラーへ

2018年10月11日(木)17時15分
松岡由希子

ボイジャー2号がいよいよ太陽系から離脱 NASA/JPL-Caltech

<無人宇宙探査機「ボイジャー2号」が、いよいよ太陽系を脱し、星間空間と呼ばれる恒星と恒星の間に広がる宇宙空間へと近づきつつある>

ボイジャー2号、いよいよ恒星と恒星の間「インターステラー」へ

NASA(アメリカ航空宇宙局)のボイジャー計画は、太陽系の外惑星と太陽系外の探査計画。1977年に打ち上げられた2機の無人惑星探査機は、これまで1号・2号ともに、外惑星の鮮明な画像の撮影に成功し、新衛星の発見に貢献してきた。

無人宇宙探査機「ボイジャー2号」は、1977年8月に打ち上げられて以来、木星、土星、天王星、海王星での探査を経て、2007年以降、太陽系を取り囲む「太陽圏」を航行してきたが、いよいよ太陽系を脱し、星間空間と呼ばれる恒星と恒星の間に広がる宇宙空間へと近づきつつあることが明らかとなった。

NASAによると、太陽から118.3AU(約177億キロメートル)の距離に位置するボイジャー2号は、現在、太陽圏の外側の領域「ヘリオシース」にあり、太陽圏とその外側の宇宙空間との境目にあたる「ヘリオポーズ」に到達する見込みだという。

ボイジャー2号が太陽圏を離れるとすれば、2012年以降、太陽圏外を飛行しているNASAの無人宇宙探査機「ボイジャー1号」(1977年9月打ち上げ)に続き、2例目となる。

ボイジャー1号と2号の軌跡

ボイジャー1号、2号からの映像

宇宙線の増加

その可能性を示す現象として研究チームが注目しているのが、宇宙線の増加だ。宇宙線とは、太陽系の外で発生した動きの速い粒子で、その一部は太陽圏に遮られている。ボイジャー2号の宇宙線サブシステム(CRS)装置では、8月下旬以降、宇宙線の測定値が、8月初旬までのものに比べて約5%高くなった。

ボイジャー1号でも、ボイジャー2号と同様、2012年5月に宇宙線が増加し、その3ヶ月後には「ヘリオポーズ」を横断して星間空間に入った。このようなボイジャー1号での経緯をふまえ、研究チームでは、ボイジャー2号も太陽圏との境目への接近に伴って宇宙線が増加しているのではないかとみている。

しかしながら、ボイジャー2号の位置は「ヘリオシース」内のかつてのボイジャー1号の位置とは異なるため、ボイジャー2号での宇宙線の増加が「ヘリオポーズ」横断間近であることを示す現象だとは断定できない。

NASAの無人探査機の研究開発などに従事するジェット推進研究所(JPL)の元ディレクターのエドワード・ストーン博士は「我々はボイジャー2号周辺の環境変化についても見ており、ボイジャー2号が『ヘリオポーズ』に達することには確信を持っている」としながらも、「ボイジャー2号がいつ『ヘリオポーズ』に到達するかはわからない」と述べている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米大統領補佐官、週内にイスラエル訪問 ガザ停戦など

ワールド

シリア、アサド政権崩壊から一夜 暫定政権巡り協議実

ワールド

イスラエル外相、ガザ人質協議に楽観的見通し 間接交

ワールド

アサド氏のロシア亡命、プーチン大統領が決定=クレム
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:韓国 戒厳令の夜
特集:韓国 戒厳令の夜
2024年12月17日号(12/10発売)

世界を驚かせた「暮令朝改」クーデター。尹錫悦大統領は何を間違えたのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能の島」の内部を映した映像が話題 「衝撃だった」
  • 2
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
  • 3
    キャサリン妃が率いた「家族のオーラ」が話題に...主役の座を奪ったアンドルー王子への批判も
  • 4
    中国の逆襲...自動車メーカーが「欧州向けハイブリッ…
  • 5
    「糖尿病の人はアルツハイマー病になりやすい」は嘘…
  • 6
    白い泡が大量発生...インド「下水汚染された川」に次…
  • 7
    ジンベエザメを仕留めるシャチの「高度で知的」な戦…
  • 8
    アサド氏はロシアに亡命...シリア反体制派が首都掌握…
  • 9
    2027年に「蛍光灯禁止」...パナソニックのLED照明は…
  • 10
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 1
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 2
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか
  • 3
    国防に尽くした先に...「54歳で定年、退職後も正規社員にはなりにくい」中年自衛官に待ち受ける厳しい現実
  • 4
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 5
    朝晩にロシア国歌を斉唱、残りの時間は「拷問」だっ…
  • 6
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 7
    人が滞在するのは3時間が限界...危険すぎる「放射能…
  • 8
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない…
  • 9
    「糖尿病の人はアルツハイマー病になりやすい」は嘘…
  • 10
    肌を若く保つコツはありますか?...和田秀樹医師に聞…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 9
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 10
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中