最新記事

韓国事情

韓国、模倣蔓延から著作権保護強化へ──中国による違法コピー対策で

2018年9月25日(火)17時45分
佐々木和義

ファッションデザインのコピーや盗用は広範囲に渡る上、裁判が長期化すると判決が下る頃にはトレンドが変わっている。商品価値は低下し、勝訴しても実益が小さいのだ。訴訟は金銭的利益より、市場に警告を発するという意味合いが強い。

'本物'を求める韓国人は大手百貨店やブランド直営店に出向き、市場では購入しない。市場で販売されているブランドは偽物と考える人が多く、店も外国人にのみ販売する。偽物として販売する事業者もいるが、精巧な偽物が多く、判断は難しい。

製菓やファッションだけではない。海賊版のDVDやゲームソフトが公然と売られ、映画や音楽を違法配信するサイトも複数ある。マイクロソフト社のWindowsや各種アプリケーションソフト、フォントなどの違法コピーは日常的に行われ、漫画配信サイトのウェブトゥーンは違法コピーが合法市場の30%に達すると業界は推定する。

さらに、偽薬は食品医薬品安全処が流通を水際で阻止したが、2012年には原子力発電所がコピー部品疑惑で稼働を停止したことがある。納入された部品の品質検査証に偽造が見つかったのだ。

中国によるコピーで、韓国は違法コピー取り締まりを強化?

いっぽう韓国検察は2012年に1兆4282億ウォン(約1179億6900万円)の違法コピーを摘発している。韓国の最高裁に相当する大法院は、日本で制作されたキャラクターの著作権を韓国でも保護すべきという判決を下し、2015年12月にうさぎのキャラクター「ルシュクル」に似せた中国製ぬいぐるみを輸入販売した事業者の実刑が確定した(中央日報)。

また、2018年6月、文化体育観光部著作権特別司法警察が関税庁等と合同でピカチューなどのコピー品を輸入販売した業者を摘発し、3億ウォン(約2965万円)相当の違法コピー品を押収している。

韓国政府の著作権保護強化は、中国における韓国ブランドのコピー拡大と重なる。「サムスン(Samsung) Anycall」を模した「Samsong Amycall」や「Lock & Lock」 を模した「LQCK & LQCK」が登場し、オリオンの製菓「コレパプ」のコピー品「パプコレ」が流通した。ちなみに、コレパプは森永の「おっとっと」の模倣を疑われている製品でもある。日本や欧州のブランドをコピーしてきた韓国が、今度は中国にコピーされる立場になっている。そうした事態をふまえて、韓国政府も著作権保護の姿勢を強めているようだ。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米韓制服組トップ、地域安保「複雑で不安定」 米長官

ワールド

マレーシア首相、1.42億ドルの磁石工場でレアアー

ワールド

インドネシア、9月輸出入が増加 ともに予想上回る

ワールド

インド製造業PMI、10月改定値は59.2に上昇 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中