最新記事

「嫌われ力」が世界を回す

不倫政治家、IT社長の恋人......「あの女」たちにイラつく心理

FOUL IS FAIR

2018年9月18日(火)17時30分
片田珠美(精神科医)

このように胸中に潜む羨望ゆえに誰かを嫌い、たたくのは、自分がやりたくてもできないこと、あるいは我慢しなければならないことを、嫌悪や攻撃の対象が難なくやってのけるからだ。

まず、40歳を過ぎた女性が9歳年下の男性に思いを寄せても、相手にしてもらえない場合がほとんどだろう。もはや女性として見てもらえない場合だってある。いくら不倫願望を抱いても、どうにもならないことが多い。たとえ相手が自分に好意を抱いてくれても、互いに既婚で、それなりの社会的地位にあれば、発覚したときに失うものがいかに大きいかを考えて、二の足を踏むはずだ。 

ところが、こうしたハードルを山尾氏はやすやすと乗り越えたように見える。報道が事実とすれば、性的快楽を享受していることになるが、この手の「他者の享楽」は、羨望をかき立てる。特にやりたいことをやれなかったり、我慢しなければならなかったりして欲求不満にさいなまれている人ほど、他者の享楽を目の当たりにすると、怒りと反感を覚えて、嫌悪する。

同じ理由で嫌われているのが堀江貴文氏だ。堀江氏は東大文学部に入学した頭脳の持ち主で、会社を設立して巨万の富を築き、「IT長者」ともてはやされた。六本木ヒルズに住み、若い美女と浮名を流し、メディアにもたびたび登場した。球団買収計画の失敗、総選挙での落選、証券取引法違反容疑による逮捕と服役などの挫折はあったものの、出所後は再び脚光を浴び、ロケット開発にも乗り出している。

要するに自分の欲望に忠実で、やりたいことをやっている。もちろん、それができるだけの財力もあるわけで、「堀江氏のように生きたい」と憧れる信奉者は一定の割合で存在する。だから、著書が売れるのだろう。

その半面、堀江氏を嫌う人も少なくない。嫌う人の胸中には、「他者の享楽」への羨望が渦巻いている可能性が高い。それを認めたくないからこそ、堀江氏のようになりたくても、なれない悔しさに歯ぎしりしながら、嫌悪感をあらわにするのではないか。

最近、女優の剛力彩芽さんとの熱愛で話題になった、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営する前澤友作社長も、同様の理由で嫌われているように見える。

前澤氏は株式時価総額1兆円企業「スタートトゥデイ」を一代で築いたやり手だ。大富豪だからこそ、プライベートジェット機で剛力さんと一緒にロシアまで行き、サッカーワールドカップ(W杯)決勝戦を現地観戦できたわけで、それだけで羨望の対象になり得る。しかも剛力さんのような若くて美しい人気女優をモノにしたのだから、羨望をかき立てるのは当然だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米政府、石油・ガス開発で2040年までに30件超の

ビジネス

ビール最大手ABインベブ、米国に1500万ドル投資

ワールド

インド経済、年8%成長必要 地政学的不確実性の中=

ビジネス

中国人民銀、最優遇貸出金利を3カ月連続で据え置き 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 10
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 7
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 8
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 10
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中