最新記事

東南アジア

マレーシアのマハテーィル首相、NYでトランプ批判 任期半ばでアンワル氏に首相禅譲を再確認

2018年9月30日(日)14時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

国連総会で演説するマハティール首相  Shannon Stapleton-REUTERS

<国連総会に出席するためにニューヨークを訪れたマレーシアのマハティール首相。前政権の腐敗政治一掃への目途を付けるところまでを自らの任期と考えていることを示唆する一方で、トランプ批判では意気盛んなところを見せた>

国連総会に出席のため米ニューヨークを訪れているマレーシアのマハティール首相は9月26日、自らの首相在任期間は約2年でアンワル・イブラヒム氏が後継の首相に就任するとの見通しを改めて表明、アンワル氏への首相禅譲は「私の約束である」と強調した。

またドナルド・トランプ米大統領について「一貫性がない」「数時間で意見を変える」と手厳しく批判、マハティール節を全開させるなど存在感を示している。

マハティール首相は5月9日の総選挙で自ら率いる野党連合が勝利し、政権交代を実現させた。そしてマハティール氏は選挙結果を受けて首相に就任した直後から「5年間の首相任期を全うすることはなく、任期途中で後継者に首相の座を譲りたい」との意向を表明、その後継候補としてアンワル氏を指名していた。

アンワル氏はかつてのマハティール政権で農相、教育相、副首相兼財務相など重要ポストを歴任(1993〜1998年)し、マハティール氏の最有力後継者と目されていた。

政敵から歴史的和解へ、反ナジブで一致

しかし、アンワル氏はマハティール首相との関係が悪化し、最後は同性愛容疑などで逮捕され、政治生命を失っていた。裁判で有罪、服役を繰り返したアンワル氏は2015年に同性愛罪で禁固5年の判決を受けて服役することとなった。

ところが、ナジブ・ラザク前首相率いる政権の汚職体質が激しくなり、2016年2月にマハティール氏は与党「統一マレー国民組織(UMNO)」を離党、新党を結成してナジブ政権との対立を深めて行った。

2016年9月5日にクアラルンプールの高等裁判所で開かれたナジブ政権が誕生させた「国家安全保障会議(NSC)法」の違法性をアンワル氏が訴えた口頭弁論の場にマハティール氏が突然現れ、約30分間別室で懇談した。これは当時「18年の怨念を超えた歴史的和解」として大きく注目され、この時点からマハティール、アンワル両氏によるナジブ政権打倒の運動が本格化した。

アンワル氏、地方議員選挙への準備

ニューヨークで9月26日に開かれた「第2回ブルンバーグ・グローバル・セミナー年次総会」に出席したマハティール首相は自らの後継者問題に対して「アンワル氏が次の首相に就任することはすでに約束したことである」と改めて明言した。

さらにアンワル氏の首相就任、つまりマハティール首相の辞任時期についてマハティール首相は「2年かもしれないし、それ以後あるいはそれ以前かもしれない」と明確にはしなかった。

しかし「国民は新しい指導者を待ち望んでいる、古い指導者ではなく。だが政権交代が実現した時、残念ながら新しい指導者は服役中で野党をまとめることができる立場にいなかった」と述べて、本来ならアンワル氏が政権交代で新首相として新生マレーシアの舵取りをすることが望ましかったとの考えを明らかにした。

アンワル氏は政権交代が実現し、マハティール氏が首相に就任した直後にマレーシア国王の恩赦で釈放、社会復帰を果たしている。

マレーシアで首相に就任するためには下院議員に選出されることが条件となる。このためアンワル氏は現職議員の辞職に伴い10月13日に投票されるネグリスンビラン州ポートディクソン選挙区での下院補選に立候補する準備を進めている。

同選挙区では野党側が候補擁立を見送ることを決めており、アンワル氏が当選して下院議員になるのは確実視されている。アンワル氏は当選して下院議員になることでいつでも首相就任が可能となる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、第1四半期の利益が過去最高 フラン安や

ビジネス

仏エルメス、第1四半期は17%増収 中国好調

ワールド

ロシア凍結資産の利息でウクライナ支援、米提案をG7

ビジネス

北京モーターショー開幕、NEV一色 国内設計のAD
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中