テスラ、株式非公開化を断念 資金繰りの危機が再浮上
8月28日、米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が打ち出した株式非公開化計画は露と消えたが、同社が資金繰りをつけなければならない事実は変わっていない。写真は同社のロゴ。ニューヨークで昨年12月撮影(2018年 ロイター/Brendan McDermid)
米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が打ち出した株式非公開化計画は露と消えたが、同社が資金繰りをつけなければならない事実は変わっていない。非公開化の断念は、これから必要になる現金を確保するという面では、何のプラスにもならないのだ。
借り入れ総額がおよそ105億ドルに膨らみ、手元資金が不足する事態が迫ってきている以上、市場関係者は近く何らかの資金調達が不可欠になるのではないかとみている。
2013年第4・四半期以降、フリーキャッシュフローがプラスだったのはたった1四半期だけ。そして今後1年で13億ドルに上る債務の返済期限が到来するのに、顧客からの預かり金を除いた手元現金も13億ドルしかない。
アナリストは今年下半期中に緩やかながらじりじりと現金がなくなっていくと予想しており、事業継続のためには年内に最大20億ドルの借り入れが必須になるかもしれない。
テスラにコメントを求めたところ、借金の支払いには内部資金と転換社債の資金を充当する方針だという第2・四半期の決算発表後の電話会議でマスク氏が行った発言を同社は改めて示した。
転換社債
アナリストに聞いても、転換社債発行が最も実現性の高い選択肢という意見だった。
マスク氏はこれまで資金調達手段として転換社債を好んで利用しており、テスラと同社が買収したソーラーシティーはそれぞれ3本の返済優先順位が高い転換社債を発行。総額は42億ドルに達する。
ただコーエンのシニア調査アナリスト、ジェフリー・オズボーン氏は、これ以上転換社債を発行するとテスラ株の空売り圧力が高まるのが難点の1つだと指摘した。
転換社債保有者は当該企業の株式をショートにしてヘッジするのが一般的である上に、実際に株式転換された場合に希薄化を通じて株価の下げ圧力をもたらす可能性があるため、空売り意欲を助長させることになる。
テスラが1年以内に返済しなければならない13億ドルのうち、まず11月1日にはソーラーシティーの転換社債2億3000万ドルが、来年3月1日には自社の転換社債9億2000万ドルがそれぞれ期限を迎える。テスラの足元の株価は310ドル台で、ソーラーシティーの転換社債の行使価格である560.64ドルは大幅に下回っているが、自社の転換社債の行使価格359.87ドルは一時上回った場面もある。
マスク氏は、これらの投資家に設定した行使価格未満で株式に転換する機会を提供する可能性もあるとはいえ、そうするにはテスラのファンダメンタルズに問題はないと相当保証しなければならないだろう。