最新記事

ベンチャー

テスラ、株式非公開化を断念 資金繰りの危機が再浮上

2018年8月29日(水)15時34分

8月28日、米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が打ち出した株式非公開化計画は露と消えたが、同社が資金繰りをつけなければならない事実は変わっていない。写真は同社のロゴ。ニューヨークで昨年12月撮影(2018年 ロイター/Brendan McDermid)

米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が打ち出した株式非公開化計画は露と消えたが、同社が資金繰りをつけなければならない事実は変わっていない。非公開化の断念は、これから必要になる現金を確保するという面では、何のプラスにもならないのだ。

借り入れ総額がおよそ105億ドルに膨らみ、手元資金が不足する事態が迫ってきている以上、市場関係者は近く何らかの資金調達が不可欠になるのではないかとみている。

2013年第4・四半期以降、フリーキャッシュフローがプラスだったのはたった1四半期だけ。そして今後1年で13億ドルに上る債務の返済期限が到来するのに、顧客からの預かり金を除いた手元現金も13億ドルしかない。

アナリストは今年下半期中に緩やかながらじりじりと現金がなくなっていくと予想しており、事業継続のためには年内に最大20億ドルの借り入れが必須になるかもしれない。

テスラにコメントを求めたところ、借金の支払いには内部資金と転換社債の資金を充当する方針だという第2・四半期の決算発表後の電話会議でマスク氏が行った発言を同社は改めて示した。

転換社債

アナリストに聞いても、転換社債発行が最も実現性の高い選択肢という意見だった。

マスク氏はこれまで資金調達手段として転換社債を好んで利用しており、テスラと同社が買収したソーラーシティーはそれぞれ3本の返済優先順位が高い転換社債を発行。総額は42億ドルに達する。

ただコーエンのシニア調査アナリスト、ジェフリー・オズボーン氏は、これ以上転換社債を発行するとテスラ株の空売り圧力が高まるのが難点の1つだと指摘した。

転換社債保有者は当該企業の株式をショートにしてヘッジするのが一般的である上に、実際に株式転換された場合に希薄化を通じて株価の下げ圧力をもたらす可能性があるため、空売り意欲を助長させることになる。

テスラが1年以内に返済しなければならない13億ドルのうち、まず11月1日にはソーラーシティーの転換社債2億3000万ドルが、来年3月1日には自社の転換社債9億2000万ドルがそれぞれ期限を迎える。テスラの足元の株価は310ドル台で、ソーラーシティーの転換社債の行使価格である560.64ドルは大幅に下回っているが、自社の転換社債の行使価格359.87ドルは一時上回った場面もある。

マスク氏は、これらの投資家に設定した行使価格未満で株式に転換する機会を提供する可能性もあるとはいえ、そうするにはテスラのファンダメンタルズに問題はないと相当保証しなければならないだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、月内の対インド通商交渉をキャンセル=関係筋

ワールド

イスラエル軍、ガザ南部への住民移動を準備中 避難設

ビジネス

ジャクソンホールでのFRB議長講演が焦点=今週の米

ワールド

北部戦線の一部でロシア軍押し戻す=ウクライナ軍
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 4
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 5
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 6
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 7
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「デカすぎる」「手のひらの半分以上...」新居で妊婦…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 10
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中