最新記事

フィンテック

キャッシュレス社会は日本に根付くか? LINEペイの本気度は銀行ビジネスを崩壊させる

2018年8月30日(木)15時45分
木内 登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) ※東洋経済オンラインより転載

LINEが「LINEペイ」の利用拡大に一気に動きだした(撮影:尾形文繁)


技術力とアイデアにモノをいわせたフィンテック企業が、決済、貸出など銀行の牙城とされてきた業務に進出している。顧客のビッグデータもフィンテック企業に集まっていく。危機感を抱いた銀行は自らデジタル通貨を発行し、スマホ決済に乗り出そうとしているが、その動きはいかにも遅い。
『決定版 銀行デジタル革命』でキャッシュレス化への流れと銀行の苦境を描いた著者が、動き始めたLINEペイの衝撃度を解説する。


「決済革命を起こす」── LINE社長の決意

無料対話アプリを運営するLINEが、「決済革命を起こす」との決意で、スマホ(スマートフォン)を使った決済サービス、LINEペイの利用拡大に一気に動きだした。

LINEペイでは店舗側のスマホに専用アプリを入れ、それをQRコード決済の端末として利用する。お客はそこに表示されるQRコードを自分のスマホで読み取って決済する。

LINEは、電子メールよりも簡単に無料で対話できるサービスが急速に利用者を拡大したという成功体験を、決済の分野でも再現しようとしているのだ。

LINEはまず、採算度外視でも利用者を拡大させることが第1と考えた。利用者が増えることでそのサービスの価値が高まるという、ネットワーク効果を狙っているのだ。LINEの出澤剛社長は、利用者が一定数を超えれば生活が変わるとも語っている。これは、LINEが新たな社会インフラを担っていくという野心を示しているのだろう。

日本でのLINE利用者は現在7500万人と、人口の実に6割近くに達している。銀行最大手の三菱UFJ銀行でも、預金口座数はおよそ4000万口座だ。LINE利用者の間で急速にLINEペイの利用が広まっていけば、その衝撃は大きい。

日本人のキャッシュレス決済の比率は現在約2割と、主要国の中で最低水準にとどまっているが、政府はこれを2025年までに4割まで高めることを目標に掲げている。もしかしたら、LINEペイはその実現を大きく助けるかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英HSBC、ネルソン暫定会長が正式に会長就任 異例

ワールド

ハマスが2日に引き渡した遺体、人質のものではない=

ワールド

トランプ氏が台湾保証実施法案に署名、台湾が謝意 中

ワールド

中国新大使館建設、英国が判断再延期 中国「信頼損な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 6
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 7
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 8
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 9
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 10
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中