最新記事

北朝鮮

猛暑で犬肉需要が急増!?──北朝鮮

Demand for Dog Meat Increases as Hot Temperatures Hit North Korea

2018年7月26日(木)14時27分
ジェイソン・レモン

韓国の首都ソウル近郊の城南市で、檻に入って犬肉食に抗議する活動家 Truth Leem-REUTERS

<伝統的に、精が付く「甘い肉」として夏バテ防止に珍重されるというから大変>

記録的な暑さに見舞われた北朝鮮で、犬肉需要が急増。

朝鮮半島では伝統的に犬肉食の習慣があり、北朝鮮では犬肉は「タンコギ(甘い肉という意味)」と呼ばれ、盛夏のスタミナ食として珍重されている。

「犬肉料理は昔からある国民食」だと、首都平壌にある最大の犬肉専門レストラン「平壌タンコギ家」のウエイトレスはAP通信に話した。「熱は熱をもって制すと言われ、酷暑の時期には犬肉と香辛料の効いた犬肉スープで精を付ける習慣がある。犬肉はほかの肉より体にいい」

朝鮮半島では旧暦に従い、7〜8月に全部で3回の「伏日」(日本の「土用の丑の日」に当たる)があり、「三伏」(サンボッ)には人々は夏バテ防止に滋養食を摂る。今年の三伏は7月17、27日、8月16日。北朝鮮では公式の気象データは発表されていないが、AP通信によると、このところ連日40℃前後の記録的な猛暑が続いており、犬肉需要は急増している。

人気レストランのメニューには犬の後ろ脚や肋肉、ゆでた皮などを使ったさまざまな料理が並ぶ。韓国にも犬食文化の伝統は残っているが、特に若い世代では趣向の変化が著しい。

犬は食用ではなく、ペットとして飼育されるようになり、犬肉を忌避するか、積極的に食べようとはしない若者が増えているのだ。犬食禁止を求める運動も起きていて、昨年夏には韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が保護された犬を家族のメンバーとして引き取り、動物愛護団体の共感を呼んだ。

猫肉食もなくならない

だが高齢層は今でも犬肉は精が付くと信じており、国際動物愛護協会によると、韓国には食用犬を飼育するドッグファームが約1万7000カ所あり、年間ざっと200万頭の犬が食用に殺されている。

今年6月、首都ソウル近郊の富川(プチョン)の裁判所が、食用に犬を殺すことを違法とする判決を下した。この判決は犬食禁止に道を開くと、動物愛護団体は期待している。地元の活動家によれば、ドッグファームは法的なグレーゾーンで運営されているが、衛生管理に問題があり、しばしば当局の監視対象になるという。

韓国よりもペースは遅いが、北朝鮮でも人々の意識は変わりつつある。AP通信の記者によると、平壌では犬を散歩させる市民の姿を日常的に見掛けるようになり、犬を栄養源ではなく家族の一員と見る人が増えているようだ。

アジアの一部の国には、犬肉に加え、猫肉食の習慣もある。台湾は昨年、アジアで初めて犬肉と猫肉の販売と消費を禁止する法律を制定した。だが韓国、北朝鮮のほか、中国、ベトナム、インドネシアでも犬肉食の習慣は根強く、国際動物愛護協会によると、アジア全体で年間ざっと3000万頭の犬が食用に殺されている。

中国南部の玉林市では今年も夏至に合わせてライチと犬肉を食べる10日間の祭りが開催されたが、中国とアメリカの保護団体が協力し、市内の市場で食用に売られる多数の犬を保護した。毎年この祭りの期間中には1万頭近い犬が食用に殺される。

webw180726-dog02.jpg
中国広西チワン族自治区の玉林市では、恒例の「犬肉祭り」の期間中、食用の犬が市場で売られる Kim Kyung-Hoon--REUTERS


180731cover-200.jpg<本誌7/31号(7/24発売)「世界貿易戦争」特集では、貿易摩擦の基礎知識から、トランプの背後にある思想、アメリカとEUやカナダ、南米との対立まで、トランプが宣戦布告した貿易戦争の世界経済への影響を検証。米中の衝突は対岸の火事ではない>

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

新ローマ教皇がゼレンスキー氏と電話、外国首脳と初対

ワールド

エジプト、スエズ運河通行料を割引へ フーシ派攻撃で

ビジネス

見通し実現していくか、内外情勢や市場動向を丁寧に点

ビジネス

日経平均3万8000円回復、米中の関税引き下げ好感
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 3
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 8
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 9
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 10
    ハーネスがお尻に...ジップラインで思い出を残そうと…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..…
  • 10
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中