ハワイで噴火ツアーが大人気 地元住民は複雑な表情
2018年6月、キラウエア火山の溶岩が太平洋になだれ込む様子を船から観察する観光客(2018年 ロイター/Terray Sylvester)
シェーン・ターピンさん(39)は長年、米ハワイ島キラウエア火山の溶岩が、数キロにわたってゆっくりと斜面を下り、太平洋に注ぎ込む地点に観光客を船で案内してきた。
だが5月に火山が噴火し、溶岩流が彼や隣人たちの家を灰にしたことで、ツアーを一時中止した。
「海沿いの家が燃えていたときには、船を出すのをやめた」と、ヒロの町でラバ・オーシャン・ツアーズを経営するターピンさんは言う。「私の隣人たちの家だ。私も、そこに住んだことがある」
だが、火山噴火の影響により、生活の再構築を迫られている多くの島民たちのように、ターピンさんも仕事に戻り、世界的に活発な活火山であるキラウエア山の噴火を見たがる観光客の需要に応えている。そうした需要は、火山の噴火後、増えているという。
「人生は、思いがけない事が起こるもの。受け止めて前に進むか、そうしないかのどちらかしかない」と、ターピンさんは言う。
5月3日に始まったキラウエア山の噴火活動は、鎮まる様子をみせていない。「亀裂8」から噴出した溶岩は、太平洋に面したカポホ地区の民家数十軒を飲み込んだ。ターピンさんがツアーで立ち寄っていた景色のよいカポホ湾は、溶岩で埋まってしまった。
そして、噴火後に一時下火になっていたハワイ島の「溶岩観光」は、今やブームとなっている。ヘリコプターやボートによるツアーを運営する業者は、観光客を喜ばせつつ、自宅を失ったり避難生活を続ける数千人の地元住民を敬う姿勢も示そうとしている。
溶岩ツアー人気
溶岩観光ツアーは、以前からハワイ島にあった。
キラウエア山は、1983年以降ほぼ継続的に噴火が続いており、新たな溶岩流が海へと流れ出すたびに、観光客の数は急増してきた。現在の噴火は、記録に残る中ではもっとも大規模で長期に渡るものだ。
ハワイ州観光局によると、ハワイ島を観光で訪れる人は、5月は数隻のクルーズ船が島の主要都市であるヒロやコナへの寄港を見合わせたこともあり、前年同月比1.6%減となった。
だが観光客が島で使う金額は増え、同3・3%増の約1億7390万ドル(約195億円)だった。6月の統計はまだ発表されていない。