最新記事

新冷戦

プーチンの敵サーカシビリ、「トランプは東欧の親米諸国の生存を脅かしかねない」

U.S. Could Strike a Deal That Poses an ‘Existential Threat’ to American Allies

2018年7月20日(金)13時10分
クリスティナ・マザ

親米反ロのサーカシビリ元ジョージア(旧グルジア)大統領はプーチンの強力な敵 Valentyn Ogirenko-REUTERS

<トランプがプーチンに取り込まれたとして批判を浴びている米ロ首脳会談の直前、プーチンの敵サーカシビリは、トランプが大きな譲歩をし過ぎる危険を警告していた>

ジョージア(旧グルジア)のミハイル・サーカシビリ元大統領は、アメリカのドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領による米露首脳会談を前にした7月16日、米フォックス・ニュースの論説ページに寄稿、トランプはプーチンを相手に、東欧における親米諸国の生存を脅かすような大幅な譲歩をしかねないと警告していた。

案の定、会談後の16日に開かれた共同記者会見で、トランプはロシアのウクライナ侵攻やクリミア併合についてひと言も触れなかった。西ヨーロッパ諸国が何より恐れたのは、トランプがクリミア併合を追認してしまうことだった。さすがにそれはなかったものの(少なくとも公式には)、他の西側指導者のように非難もしなかった。

ジョージアは、ロシア国境沿いのコーカサス地方にある国で、2008年にプーチンのロシア軍の侵攻を受け、10日間と短期間ではあるが軍事衝突した親欧国(南オセチア紛争)だ。サーカシビリはロシアの侵攻を受けたときの大統領で、プーチンとは今も緊張した関係が続いている。

サーカシビリ自身、何かと問題の多い人物でもある。ジョージアの大統領退任後に、汚職や弾圧などで国際指名手配されたため反露親米のウクライナに亡命。しかし、やがて2017年には国籍を剥奪される。

短期間ながらウクライナのオデッサ州知事も務めたサーカシビリは、ロシアがウクライナ侵攻を図ったのはアメリカが十分強く出なかったからだと考えている。

「ジョージ・W・ブッシュとバラク・オバマの両大統領は任期はじめに、ロシアとの関係修復を試みるという同じ過ちを犯した。ムチを隠してニンジンを見せすぎたのだ。ブッシュもオバマも善意を示そうとしたのだが、プーチンはそれを弱さだと解釈した。プーチンが最もよく理解するのは、絶対的な力という言葉だ」

「欧米側がロシアの脅威を甘く見ていたことと、プーチンが『欧米の脅威』を過大評価していたこととが相まって、我が中央アジアは破滅的な影響を被った。ジョージアもウクライナもプーチンの侵攻を受け、クリミアは併合された」

【参考記事】ウクライナ戦闘激化で試されるトランプ──NATOもEUも捨ててロシアにつくのか?


「時々方針が変わるアメリカ外交と違い、ロシアの外交は明確で一貫している。プーチンは、ウクライナやジョージア、モルドバといったNATO(北大西洋条約機構)入りを熱望する旧ソ連諸国における『凍結された紛争(棚上げの紛争)』を扇動し、利用し続けるだろう。そうすれば、ロシア周辺の独立国家が、西側の軍事同盟に組み込まれることもなくなる。加えてプーチンは、旧ソ連圏における民族主義的で過激で腐敗した政治家を扇動し、社会を分裂させて、周辺国家の弱体化を図っている」とサーカシビリは言う。

ロシアのクリミア併合とその後も続くウクライナ東部への軍事介入をトランプが公に非難しなかったことで、これら旧ソ連の国々は今後ますます破滅的な方向へ追いやられていくかもしれない。

(翻訳:ガリレオ)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マラリア死者、24年は増加 薬剤耐性や気候変動など

ワールド

米加当局「中国系ハッカーが政府機関に長期侵入」 マ

ビジネス

ロシア大手2行、インド支店開設に向け中銀に許可申請

ワールド

ガザの反ハマス武装勢力指導者が死亡、イスラエルの戦
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 7
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 8
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 9
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 10
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中