最新記事

金融犯罪

相場操縦の中国人摘発、日中当局が初連携 国境またぐ不正に警鐘

2018年7月17日(火)16時05分

 7月17日、日本の証券取引等監視委員会と中国証券監督管理委員会(CSRC)が不正摘発で連携を深めている。写真は東京証券取引所で2015年8月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

日本の証券取引等監視委員会と中国証券監督管理委員会(CSRC)が不正摘発で連携を深めている。証券監視委が今年6月末、相場操縦の疑いで中国在住の個人投資家への課徴金納付命令の勧告に至った背景には、両国の当局同士の交流が深まったことがあった。グローバル化した金融市場で存在感を高めつつあるアジアの個人投資家に対し、不正取引への警鐘を鳴らす第一歩になったと証券監視委は自信を深めている。

ココカラファイン株の不自然な発注、追跡の末に

「この値動き、何か不自然だな」──。3年前の2015年7月8日午前9時過ぎ、株式市場の取引を映し出すモニターを見ていた証券監視委・市場分析審査室のスタッフの1人は首をかしげた。

東証からの情報で、不自然な動きがあると報告があったドラッグストア経営のココカラファイン株<3098.T>。その株価が徐々に値を下げていたが、その後は一転して上昇し始めた。

この時、証券監視委の情報提供窓口にも、証券取引所や個人投資家から不自然な動きの銘柄があるとの報告が寄せられていた。

証券監視委が、こうした情報などをもとに調査したところ、その銘柄に買い仕込み注文が発注されていた。同時に売り注文も、1単位(100株)という最少単位で繰り返し発注する動きが、10分間で90回余りも繰り返されていた。

同株が値を下げたところで、発注者は実際に買い注文を約定し、結果的に安く株を買うことができた。この時、市場での売り板占有率は80%に上っていた。その後、売り見せ玉を含む売り注文を全て取り消した。

今度は買い見せ玉を用いて逆の取引を行い、値を吊り上げたところで、売り抜けを図り、安く仕入れた同銘柄を高く売ることで利益を上げていた。買い板占有率は90%に上っていた。

「明らかに自分に有利な価格で約定するための相場操縦」との確信を得た証券監視委は、東証や証券会社に裏取りを始め、この取引を取り次いだ日本の証券会社の先に米国の証券会社が存在し、さらにそこが受託したのは、中国在住の中国人の注文であることを突き止めた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

英中銀、プライベート市場のストレステスト開始 27

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ワールド

ウクライナ南部に夜間攻撃、数万人が電力・暖房なしの

ビジネス

中国の主要国有銀、元上昇を緩やかにするためドル買い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中