最新記事

アメリカ経済

トランプの仕掛けた貿易戦争、米国内に生まれる「勝ち組と負け組」

2018年7月15日(日)12時27分

ノランダ精錬所が、郡学区に支払う義務があった310万ドルの税金を納めることはついになかった。そのため、学校の雇用が削減されたり、修繕工事が停止したりしたと、サム・ダンカン郡教育長は言う。転出する家族が増え、地区の学校の生徒数は10%減ったと、ダンカン氏はつけ加えた。

それでも、ほとんどの世帯が地元に残った。地区のもう1つの産業に雇用を求めた人が多かった。

「求人を出していたのは、農家だけだった」と、かつてノランダ精錬所で働いていたダルトン・ベゼルさん(31)は言う。

その年の夏の終わりまでに、ノランダの従業員は9人に減った。かつての数分の1の給料で残った彼らに託されたのは、工場施設を守り、再開の道を模索する仕事だった。

<トランプ関税に賭ける>

マグニチュード7メタルズのスティーブ・ラッシュ最高執行責任者(COO)は、その時残った9人の1人だった。

買収に関心を寄せる業者がいくつか工場を見学にきたが、彼らの関心は工場再開ではなく、施設を解体してスクラップとして売却することにあった。

だが1社だけ違った。資源大手グレンコアでアルミニウムのトレーダーをしていたマット・ラック氏が設立したマグニチュード7メタルズだけは、採算が合うなら工場を稼動させたいと考えていたと、ラッシュ氏は言う。

ラック氏は、コメントの求めに応じなかった。

共和党が過半数を握る州議会も、労組に加盟していない労働者を雇うことを容易にする州法を議論を呼びながらも成立させ、工場再開を後押しした。工場側の代表者も、この法案を支持した。

ノランダから残った従業員9人の一部も、電気事業者との間で契約を成立させ、新会社のために原材料の価格を確定させて支援した。

「転機となったのは、ワシントンから鉄鋼関税の話が出始めたときだった」と、ラッシュ氏は振り返る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀の12月利下げを予想、主要金融機関 利下げな

ビジネス

FRB、利下げは慎重に進める必要 中立金利に接近=

ワールド

フィリピン成長率、第3四半期+4.0%で4年半ぶり

ビジネス

ECB担保評価、気候リスクでの格下げはまれ=ブログ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 10
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中