最新記事

事件

タイ洞窟内の少年救出作戦開始 作戦成功祈る一方、早くも洞窟観光地化や映画化も

2018年7月9日(月)09時22分
大塚智彦(PanAsiaNews)

洞窟内で発見された少年たち REUTERS-TV

<世界中の注目を集めたタイのサッカーチームの少年たちとコーチが洞窟内に閉じ込められた事件、いよいよ救出作戦が開始された>

タイ北部チェンライの郊外にあるタムルアン洞窟で6月23日に地元のサッカーチームの少年(11歳から16歳)12人とコーチの男性(25)の計13人が、豪雨による水位上昇で脱出が不可能になり、閉じ込められてから2週間。7月8日午前10時から、少年らを1人に2人のダイバーが同行してともに潜水して救出する作戦が始まった。作業は順調に進み、同日夜、4人の少年が洞窟外に救い出された。他の少年たちの救出作業も引き続き行われている。

少年らの行方不明が伝えられた後の7月2日に英国の潜水チームが闇と泥で視界がほぼゼロの中、洞窟入り口から約5キロの地点で13人を発見することに成功、一刻も早い洞窟からの救出方法が検討され、その進展状況にはタイのみならず世界から大きな注目が集まっていた。

少年らが発見された時の様子が動画で公開され、洞窟の外で安否を気遣っていた少年の親や親族、地元関係者、救出作業関係者は取りあえず安堵したものの、13人をどうやって洞窟外へ安全に連れ出すかという大きな問題に救助隊は直面していた。

タイムリミット迫る中、救出作戦開始

雨期で雨が降り続ける中、洞窟内からの水の排水を続けているが、安全に連れ出せるまで下げるには程遠く、子供たちに潜水の基礎を教えて専門のダイバーと一緒に脱出する方法が検討された。しかし、7月6日タイ海軍特殊部隊のダイバーが子供たちに物資を届けた帰路、洞窟の水面下で酸素不足に陥り死亡したことから「あまりにリスクが高い」との声も出ていた。

日本もJICA(独立行政法人国際協力機構)が排水の専門家を派遣、米軍兵士、英国の潜水チーム、中国、オーストラリアなど海外の専門家が現地に派遣され、タイ軍、警察、地元自治体関係者、医療関係者らによる救出合同チームによる必死の作戦が続けられている。8日以降は大雨が予想されていることや、13人が閉じ込められた空間に救助関係者が入れ替わり多数滞在した結果「酸素不足」の懸念があることなどから「ここ数日が救出のリミットになるだろう」(チェンライ県知事)と作戦は時間との戦いとなっていた。そして8日午前「今がそのタイミングだ」(同県知事)として作戦開始に踏み切ったという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三井住友FG、欧州で5500億円融資ファンド 米ベ

ワールド

シリア外相・国防相がプーチン氏と会談、国防や経済協

ビジネス

円安進行、何人かの委員が「物価上振れにつながりやす

ワールド

ロシア・ガスプロム、26年の中核利益は7%増の38
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中