最新記事

事件

タイ洞窟内の少年救出作戦開始 作戦成功祈る一方、早くも洞窟観光地化や映画化も

2018年7月9日(月)09時22分
大塚智彦(PanAsiaNews)

タイならではの事件への対応


少年たちが閉じ込められた洞窟内の様子 Channel NewsAsia / YouTube

そんな必死の現場の空気とは別に、いかにもタイらしい現象や事案も次々と発生しているが、こちらはあまり海外では伝えられていない。

少年たちが洞窟内で発見され、とりあえず無事が確認された時点で地元チェンライ県などは「洞窟を観光資源として売り出す」方針を明らかにしたのだ。タイ観光省とチェンライ県観光課は「タムルアン洞窟は現在タイ国内だけでなく、世界の注目を集めている」として洞窟への道路、関連設備の整備を今後迅速に進めて「チェンライの一大観光地としてPRしよう」と協議を進めることになったと地元報道は伝えた。

また仏教徒が大半のタイだけに、著名な高僧がまだ少年らが発見されていない時点で現場を訪れ、洞窟内を透視。「少年の魂を発見したので生存は間違いない」と発言した。その後に無事が確認されたことが報じられ、国民の多くが夢を託す宝くじで13番に絡む数字や高僧が乗車してきた車両のナンバーの数字のくじがあっという間に売り切れたという。

ドイツに滞在していることが多いワチラロンコン国王から少年の親たちを励ますために贈られたという「国王の肖像画」のニュースや国王の子息が洞窟内の少年らに当てた励ましの手紙がニュースで取り上げられるなど、お国柄といえばそれまでだが、少年らに関係した「自国ネタ」の報道がニュースを飾っている。

まだ今後の展開が見えない状況で、すでに今回の事件の映画化の話しも一部では出ているという。タイの3面記事を伝えるネットの掲示板などでは「英人ダイバーと最初に話した少年は、地元の教会で英語を勉強していた優秀な少年だった」などという書き込みが続いているという。

モスクワでサッカー「ワールドカップ2018」を開催中のFIFA(国際サッカー連盟)は「救出されたら少年13人を決勝の試合に招待するとしており、8日午前から始まった救出作戦で全員が無事に救出されれば、決勝の試合のスタンドで声援を送るタイの少年サッカー選手の姿が見られることになるだろう。

※情報を更新しました

otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

ニューズウィーク日本版 コメ高騰の真犯人
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月24日号(6月17日発売)は「コメ高騰の真犯人」特集。なぜコメの価格は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

香港取引所、東南アジア・中東企業の誘致目指す=CE

ワールド

米ミネソタ州議員射殺事件、容疑者なお逃走中 標的リ

ワールド

IEA、石油供給不足なら備蓄放出の用意 OPEC「

ワールド

金価格約2カ月ぶり高値、中東紛争激化で安全資産に逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中