最新記事

映画

日本は韓国のわずか3分の1 快進撃続ける韓国の映画観客動員数

2018年7月21日(土)20時10分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

当日のチケット販売状況まで確認できる韓国映画界


今年上半期の映画界はハリウッドのヒットシリーズが好調だったと伝える韓国のニュース 연합뉴스TV / YouTube

さて、この観客動員数、韓国では一体どうやってカウントしているのだろうか。韓国には映画振興委員会(KOFIC- Korean Film Council)と呼ばれる文化体育観光部(日本の文科省に相当)傘下の行政機関がある。この団体が運営している映画館入場券統合電算網(KOBIS-Korea Box Office Information System)というシステムで観客動員数を発表している。一般の人も作品を1日単位で地域別や現在の予約率など、数時間遅れとはいえほぼリアルタイムで検索が可能で、映画のデータマニアにはたまらない検索サイトだろう。2004年5月よりKOBISのサービスが開始されたが、当時はこのシステムに加入する映画館は50%ほどだったという。ところが、未加入だった個人経営の映画館を大手シネコンが買収し続けた結果、現在では99%の加入率を誇っている。映画館の収益の透明性と確実性に一役買っているのと同時に、映画振興委員会が運営していることで、後日上映を証明する際、このデータが証拠になるなどプロアマ問わず幅広く利用されているシステムだ。

かつては配給会社が劇場に出向いて確認

開始当初の加入映画館は半数ほどだったが、それ以前システムが確立されてなかった当時は、配給会社は映画館側の報告のみを頼りに利益の分配などを行っていたという。地方の小さな映画館などは分配金を少しでも払いたくないがために嘘の報告をしたり、配給会社もその言い値の数値が信じられない場合は、社員が実際に全国各地の映画館に出向いてその目で確かめに回ったそうだ。動員数当たりの利益計算はひとりあたり約3000ウォン(約300円)程度と考えられている。これは韓国の平均的なチケット代1万ウォンを考えると少ない気もするが、割引も多いので平均するとこの程度になる。

KOFICはその他にも、映画や映像物などの等級審議や映画に関する助成などたくさんの業務を行っているが、2017年には反政府的な作品について製作/配給/映画館などをリストアップした「文化界ブラックリスト」を朴槿惠前大統領時代の大統領府と共に制作したとして注目され、ニュースにも大きく取り上げられた。このリストに名前が挙がった映画人はKOFICの支援から除外され、弾圧まで加えられている。「明らかに表現の自由を奪う行為である」と映画関係の団体は訴えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中