最新記事

米朝関係

トランプ政権、北朝鮮の非核化で態度軟化 「CVID」が国務省の文章から消えた

2018年7月5日(木)10時08分

7月4日、ポンペオ米国務長官が今週、6月12日の米朝首脳会談後初めての訪朝に出発するが、米政府は北朝鮮の非核化を巡り「全か無か」のアプローチを棚上げしたもようだ。写真は会見する同国務長官。5月にニューヨークで撮影(2018年 ロイター/Brendan McDermid)

ポンペオ米国務長官が今週、6月12日の米朝首脳会談後初めての訪朝に出発するが、米政府は北朝鮮の非核化を巡り「全か無か」のアプローチを棚上げしたもようだ。

ポンペオ氏は6日から7日にかけて1日半、北朝鮮に滞在する。

米朝首脳会談で北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、朝鮮半島の非核化に向けて努力することを約束したが、具体的な方法や時期には言及しなかった。

首脳会談以降、米当局者は合意の具対化に取り組んできたが、当局筋によると、進展はほとんど見られないという。一方で、トランプ政権のアプローチには軟化の兆しが出ている。

米国はこれまで、核開発の完全放棄を制裁緩和の条件とし、ポンペオ長官も米朝首脳会談前、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」以外は受け入れないと述べていた。

しかし、ポンペオ氏訪朝の準備として今月1日に行われた米国のソン・キム駐フィリピン大使と北朝鮮側との会談後、国務省の文言から「CVID」という表現が突然消えたもようだ。

国務省が今週発表した声明では、米国の目標は「最終的かつ完全に検証された非核化(final, fully verified denuclearization)」と改められている。

米当局者2人によると、トランプ政権は韓国の助言を踏まえてCVIDの要求を後退させた。

韓国側は、北朝鮮が全ての要求に応じるまで譲歩しないという姿勢に固執するより、段階的な交渉を行う方が成功の可能性が高いと主張している。

当局者の1人によると、米国が「全か無か」のアプローチにこだわれば、北朝鮮問題で中国とロシアの協力を維持することがより難しくなるとの見方も出ているという。

この当局者によると、ソン・キム大使との協議で北朝鮮側は、「完全かつ検証可能で不可逆的」という文言も含め、最終的な合意の主要な条件を定義することをおおむね拒否した。

関係筋によれば、韓国の高官はワシントンで先月行った米当局者との協議で、米国は北朝鮮にCVIDを要求するのをやめ、代わりに「相互の脅威削減」に言及する必要があると伝えた。「数百人」の国際検査官が関わる通常の核・ミサイル施設の査察に北朝鮮が応じる可能性は低いとも指摘したという。

新米国安全保障研究所(CNAS)のアジア専門家、パトリック・クローニン氏は「米国は北朝鮮が向こう数カ月間にどこまで核プログラムを放棄する用意があるか探ろうとしている可能性があり、そのために幾つかの文言を排除する必要があるなら、現時点ではそうする意思があるようだ」と述べた。

[ワシントン/ソウル 4日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月7日号(9月30日発売)は「2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡」特集。投手復帰のシーズンも地区Vでプレーオフへ。アメリカが見た二刀流の復活劇

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

焦点:韓国中古車輸出が急成長、ロシアや中東向け好調

ワールド

イスラエル、ガザ和平案第一段階の「即時実行」準備

ワールド

自民総裁選きょう投開票、決選にもつれ込む公算 夕方

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P最高値更新、ハイテク下げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、Appleはなぜ「未来の素材」の使用をやめたのか?
  • 4
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 5
    謎のドローン編隊がドイツの重要施設を偵察か──NATO…
  • 6
    「吐き気がする...」ニコラス・ケイジ主演、キリスト…
  • 7
    「テレビには映らない」大谷翔平――番記者だけが知る…
  • 8
    墓場に現れる「青い火の玉」正体が遂に判明...「鬼火…
  • 9
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 10
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 5
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 6
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 7
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中