最新記事

米中関係

貿易戦争、中国が「原油関税」で報復 米石油企業が犠牲者に

2018年6月20日(水)16時35分

6月18日、米国からの原油輸入に関税をかけるという中国の脅しは、過去2年で輸出額が月間約10億ドル(約1100億円)に膨らんだビジネスを直撃することになる。写真は米ロサンゼルスの製油所。2014年10月撮影(2018年 ロイター/Lucy Nicholson)

米国からの原油輸入に関税をかけるという中国の脅しは、過去2年で輸出額が月間約10億ドル(約1100億円)に膨らんだビジネスを直撃することになる。

中国を含む主要貿易相手国に対する米国の貿易赤字を巡る対立がエスカレートする中、トランプ米大統領は先週、500億ドル相当の中国製品に対し、7月6日から25%という高額な輸入関税をかけると発表した。

これを受け、中国は、原油を含む米国のコモディティーの一部に対し、同等の報復関税をかけると発表した。

こうした米中の報復合戦によって犠牲になるのは、米石油企業だと投資家はみている。 エクソンモービルとシェブロンの株価は15日以降、1─2%下落。米原油価格も約5%下落した。

「貿易戦争のこのようなエスカレーションは石油価格にとって危険だ」と、OANDA(シンガポール)のアジア太平洋取引責任者、スティーブン・イネス氏は言う。

「冷静さが勝ることを期待しよう。だが、私はあまり楽観していない」と同氏は付け加えた。

貿易を巡る米中の対立は、石油市場にとって極めて重要な時期と重なった。

中東諸国が主導する石油輸出国機構(OPEC)とOPEC非加盟国のロシアが協調減産を行ってから1年半が経過した現在、石油市場はタイト化し、価格が押し上げられている。

中国向けの米原油輸出が減少すれば、とりわけOPEC加盟国やロシアなど他の生産国が利益を得る可能性がある。OPECの中心的存在であるサウジアラビアとロシアは減産を緩和し、輸出増を示唆している。

また、米国産原油の輸入を中国が削減すれば、米政府が5月に発表した新たな制裁で抑制しようとしているイラン産原油の輸出が恩恵を受ける可能性がある。

「中国は、米国産石油の一部をイラン産で補う可能性がある」とコンサルタント会社JTDエナジーサービシズのディレクター、ジョン・ドリスコル氏は指摘する。

「中国は制裁という米国の脅しにひるんではいない。過去においてもそうだ。したがって、この外交的な対立において、中国はただ米国産原油をイラン産に置き換える可能性がある。そうなればトランプ氏の逆鱗(げきりん)に触れることは間違いない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

7月消費者態度指数は前月比0.8ポイント低下の33

ビジネス

オープンAI、売上高が年換算で120億ドルに=報道

ワールド

米韓が貿易協定に合意、相互・車関税15% 対米投資

ビジネス

伊プラダ上半期は9%増収 ミュウミュウ部門が好調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 3
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 4
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 5
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 10
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中