最新記事

東南アジア

インドネシアで今度はワニ騒動 首都の海岸に出没、過去には犠牲者続出

2018年6月19日(火)18時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

インドネシアではヘビ同様にワニもすぐそこにいる野生動物だ。写真は廃タイヤが首に巻き付いたままになったワニ。中部スラウェシ州パルで Antara Foto/Mohamad Hamzah/via REUTERS

<人を丸呑みにするヘビがいるインドネシア。だが危険な野生動物はほかにもいる>

巨大ヘビが人間を飲みこむ被害が伝えらえたインドネシアで今度は巨大ワニが首都ジャカルタの海岸に出没、イスラム教の重要な行事「断食」が終わり長期休暇中に同海岸を訪れた市民をパニックに陥れている。

インドネシアではヘビの被害と同様に過去に川や海で巨大ワニに人が襲われて死亡する事件が結構な頻度で発生しており、東部イリアンジャワの有名な観光地でもシュノーケリング中のロシア人観光客がワニに襲われて死亡する事件や川で遊泳中の10歳の少女が父親の目の前でワニに襲われ、行方不明となる事件などが起きている。

ワニはインドネシア第2の都市スラバヤの象徴でサメと格闘する姿を描いた像が街中に溢れており、川だけでなく海にも生息するワニは昔からインドネシア人には身近な動物だったことがわかる。

ヘビ、ワニとインドネシアは野生動物にも十分気をつける必要がある「野生の王国」でもあり、十分に注意することを決して忘れてはならない。

ジャカルタ北海岸で目撃のイリエワニ

波止場に姿を現したイリエワニ

6月14日午後5時ごろ、ジャカルタ北部の港湾地区タンジュンプリオクにある波止場ポンドック・ダユンの入り江をゆっくりと泳ぐワニが目撃者によって撮影され、その動画がソーシャルネットワークにアップされ、周辺住民は大きな騒ぎになった。

通報を受けて海上警察や海軍が出動して同波止場周辺を警戒パトロール中の16日に再び同じ個体と思われるイリエワニが出没した。警戒中の海軍兵士が銃でワニの頭部を撃ったが、ワニはそのまま姿を消し、捕獲・発見に至っていない。

ワニが目撃された波止場から約6キロ先にはジャカルタ市民の憩いの場であるアンチョール公園があり、海岸は水遊びする家族連れ、子供たちで年中賑わっている。特に断食が終わった15日を挟んでインドネシアは11日から20日までの長期連休中で同海岸には多くの人が詰めかけていた。

アンチョール海岸ではワニ出没の連絡を受け警備員などが24時間態勢で警戒監視を続けているほか、海軍や警察による海上からの捜索もボート3隻、人員約20人で続けられているが、これまでのところ発見されていない。

大臣、副知事が射殺でなく捕獲を

こうした海上警察、海軍によるワニ捜索に関して17日、シティ・ヌルバヤ環境林業相やジャカルタ特別州のサンディアガ・ウノ副知事らが相次いで声明を出し「当該のワニは射殺するのではなく、可能な限り生きたまま捕獲する方向で検討してほしい」と捕獲作戦を指示した。

環境林業相は声明でワニが野生のものなのか飼育中に脱走したものなのかを見極める必要があり、「射殺より捕獲が優先」としている。もっとも、捕獲したところでどうやって野生なのか飼育されたワニかを判断するのかについては言及していない。

16日以降は目撃されたワニは姿を見せていないので、海軍兵士の射撃で致命傷を追って死んだのではないかとの説も浮上しているが「それなら死体が見つかるはず」として沿岸部での死体捜索も行っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB利下げ「良い第一歩」、幅広い合意= ハセット

ビジネス

米新規失業保険申請、3.3万件減の23.1万件 予

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 10
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中