世界の空でパイロット獲得バトル 人手不足で稼働しない航空機も
コストのかかるパイロット訓練と、米国やオーストラリアなどで以前に行われた数年間の新規採用停止が、パイロット志望者が業界に入る障害となっている。業界では今後20年でパイロットを63万7000人増やす必要があると、米航空機大手ボーイングは予想している。
その20年で、航空機の運行量はほぼ2倍に増えるとIATAは推計している。乗務員訓練を手がけるカナダのCAE
エアバスやボーイングなどの航空機大手も、訓練などのサービスに事業を広げようとしている。航空機建造よりも利幅が大きくなる可能性があるからだ。
また、自社訓練プログラムの拡充を計画している航空会社もある。地域航空子会社のカンタスリンクで退職率が高くなっているカンタスは、パイロットを確保するため、2000万豪ドル(約17億円)を投じて新たに航空訓練学校を設立すると表明。エミレーツは昨年11月、1億3500万ドル(約148億円)を投じて最大600人の候補生を訓練する航空訓練アカデミーを開校した。
「われわれには社会的責任がある」と、カンタスの国内事業責任者アンドリュー・デービッド氏は話す。「今後も国内外の中小航空会社からパイロットを引き抜くことは可能だが、われわれも(パイロット供給に)貢献する必要がある。それが、ここでの取り組みの1つだ」
<獲得戦争>
他の航空会社は、海外から採用せざるを得なくなっており、中国との競争にさらされている。経験豊富な外国人機長の需要が高い中国では、航空各社が最高年俸31万4000ドルを免税で提示している。
「パイロットが不足しているというよりは、必要とするパイロット、特に経験豊富なパイロットを呼んできて働き続けてもらうためのコストが高くなっている」と、アジア太平洋航空会社協会のアンドリュー・ハードマン事務局長は言う。「獲得戦争が起きている」